サイバー攻撃 中ロ・北朝鮮の脅威明記 政府が戦略案

政府は27日午前、首相官邸でサイバーセキュリティ戦略本部を開き、今後3年間の基本指針となる戦略案を決定した。重要インフラへの攻撃が相次ぐ状況を踏まえ、企業に対処計画の策定を促す。中国、ロシア、北朝鮮の関与が疑われるサイバー攻撃が増えたと初めて明記した。
戦略案は月内に閣議決定する。改定は2018年以来3年ぶりになる。
サイバー空間の現状に関し「国家間の競争の場の一部となっている」と指摘した。「国家や民主主義の根幹を揺るがす重大な事態が生じ、安全保障上の課題へ発展していくリスクをはらむ」と問題提起した。
IT(情報技術)機器や重要インフラに関して信頼性を確保するよう企業に求めた。政府は情報通信や電力など14分野を重要インフラに指定している。
これらの事業者に関し「適宜適切な情報把握や分析、事案対処に向けたルール作りを一体的に推進する」と記した。
安全性を可視化する基準づくりを推進し、サプライチェーン(供給網)の防衛を強化すると掲げた。クラウド事業者をサイバー攻撃の重点防護対象に加えた。
「中国は軍事関連企業や先端技術保有企業の情報窃取、ロシアは軍事や政治目的の達成のためサイバー攻撃を行っているとみられる」と打ち出した。国名を列挙して脅威に備えるよう呼びかけたのは初めてだ。
こうした国からの攻撃を巡っては、外交や刑事訴追の手段も含めて「断固たる対応をとる」と強調した。自由と民主主義、法の支配など、日本と共通の価値観を持つ米欧諸国と情報を共有し、連携して対処する方針を示した。
戦略本部の本部長を務める加藤勝信官房長官は会議で「デジタル改革とも一体となって進める必要があり、関係機関の一層の対応能力の強化、連携強化が重要になる」と述べた。