高速道有料期限、65年から再延長へ 老朽化で無料遠く
渋滞緩和へ料金変動制

国土交通省の社会資本整備審議会部会は26日、2065年までを期限とする高速道路の有料期間を再延長すべきだとする中間答申案を示した。老朽化で維持更新費が膨らむため、料金徴収を継続し財源を確保する。渋滞緩和にむけて交通量に応じ料金を変動させる仕組みの導入も盛り込んだ。
部会が近く正式に答申する。国交省は関連法改正を視野に具体的な制度設計に入る。日本道路公団が05年に民営化した際、50年までに建設費の借金を返済し、無料化すると法律で定めた。12年の中央自動車道笹子トンネルの天井板崩落事故を機に、巨額の更新費を確保する必要があるとして14年に返済期限を65年に延長していた。再延長で無料化はさらに遠のく。
当初、更新に必要な追加費用は約5.2兆円を見込んだが、国交省が14年度以降に全国の道路を詳しく点検した結果、予想以上の劣化が判明した。数兆円単位で上乗せされる公算が大きい。自動運転車の普及が進めば専用レーン整備なども必要で、整備費はさらに膨らむ。
答申案は財源確保策は利用者負担を基本とすることが「妥当」と明記した。料金引き上げも検討したが、現役世代の負担増につながり、理解を得ることが困難として「料金徴収期間の延長について具体的な検討を進める必要がある」と結論づけた。
全国の高速道路は整備計画を含めて約1万4000キロメートル。有料区間は銀行などからの借り入れで建設し料金収入を返済に充てる。債務残高は20年時点で約35兆円。老朽化対策費が際限なく膨らめば債務も積み上がる。実質的には「永久有料化」となり利用者負担に跳ね返る可能性もある。
今後、対策費を正確に見積もり確実な借金返済計画を立てることが不可欠となる。
国と自治体が整備し無料開放している区間の維持管理費についても「利用者に負担を求めることを基本とすべき」と記した。ただ地方では生活道路としての依存度が高いケースもあるため地域政策に配慮して判断する。有料化には地元の反発も予想され調整が難航する可能性もある。
交通量の平準化をめざす料金変動制は交通量の多い曜日や時間帯は料金を高く、少ない時は安くする。東京五輪開幕に合わせ首都高速道路で19日から試験実施中。午前6時~午後10時はマイカーの基本料金を1000円上乗せし、午前0~4時は全車両を半額にする。
次の段階では首都圏の混雑路線を指定し通年で料金差を設ける。東京湾アクアラインや中央自動車道小仏トンネルなど複数区間を想定し、早ければ21年度にも導入する。将来は時間単位や経路によって料金が変わる仕組みも念頭に置く。
新料金では利用者負担が増すほか、貨物トラックなど企業物流にも影響する。国交省は段階的に導入範囲を広げる方針だが利用者の理解を得るための丁寧な説明が欠かせない。海外ではシンガポールや欧州などが変動料金制をすでに導入し、一定の渋滞解消につなげている。