電気代値上げ圧縮余地探る 政府が審査本格化

大手電力各社による家庭向け電気代の値上げを巡り、経済産業省の審査が本格的に始まった。大手7社は火力発電所に使う燃料の高騰を理由に4月以降で3〜4割程度の値上げを申請しており、経産省は圧縮を探る。政府が1月分の電気代から始める2割程度の値引きを踏まえても、各社の値上げ分を相殺するのは難しい状況だ。
東北電力、北陸電力、中国電力、四国電力、沖縄電力の5社が4月から27.9〜42.7%の値上げをめざし経産省の電力・ガス取引監視等委員会による審査を受けている。東京電力ホールディングスと北海道電力も6月からの値上げを申請しており、2月以降に審査に入る。
家庭向けの電気料金は規制料金と自由料金に分かれる。会社側が任意に設定できる自由料金と異なり、規制料金は値上げに経産省の審査や認可が必要となる。一般家庭の過半が規制料金で契約している。電力小売り各社が自由料金を設定する際の判断材料にもなる。
影響が大きいため審査の一環として電気事業法に基づいて消費者から直接意見を聞く公聴会を開く。経産省は30日、まず沖縄電力の値上げについて那覇市で公聴会を開いた。沖縄県内の縫製業界の団体が「企業収益への影響を考え戦々恐々としている。段階的な値上げと政府支援をお願いしたい」と訴えた。
審査の焦点は申請した値上げ幅の圧縮だ。今回の値上げはロシアによるウクライナ侵攻や円安による燃料の調達コストの上昇が原因となっている。すでに審査に入った5社は石炭、液化天然ガス(LNG)、石油の購入額が前回の改定時から2〜4倍程度に膨らむと見込む。

監視委は設備投資や資産運用など、経営効率化のための企業努力ができているかを見極める。人件費も審査するが、燃料費に比べてウエートは小さく大幅な圧縮にはつながりにくい。東北電力の場合、燃料費などが原価の6割を占める。人件費は2%ほどにとどまる。
監視委は石炭を安い国からの調達に切り替えることを求める。燃焼効率が良い石炭の産地は限られるため余地は乏しいとの見方が多い。
直近では2011年の東日本大震災後に各社の値上げが相次いだ。原子力発電所がすべて止まった分を火力発電所で補い、燃料の調達コストが増えたためだ。事故を起こした東京電力(当時)は10.28%の値上げを申請し、8.46%で認可された。
政府は激変緩和措置として1月分から電気・ガス料金の負担軽減策を始める。家庭向け電気料金は1キロワット時あたり7円値引きする。電気を月400キロワット時使う場合は2800円の値引きで2割程度の抑制になる。1月分の使用量を記載する検針票や明細票で値引き額が示される。
消費者はいったん電気代が値引きされた後で値上げを迎えることになる。たとえば東北電の今の規制料金は月260キロワット時使用した場合で月8565円。これを1万1282円に引き上げる内容を申請している。値上げ幅は約2700円で、政府の軽減策による値下げ幅の1820円を上回る。