こども家庭庁、虐待対策・家庭支援を強化 法案閣議決定
政府は25日、子ども政策の司令塔となる「こども家庭庁」を創設する法案を閣議決定した。同庁は厚生労働省と内閣府に分かれる子育て支援や虐待対策などを一元的に担う。教育分野は文部科学省が引き続き所管する。

こども家庭庁は2023年4月に発足する。専任閣僚とこども家庭庁長官をおく。専任閣僚は各省庁の取り組みが不十分ならば改善を促す「勧告権」を持つ。
政府は内閣府から少子化対策や子どもの貧困対策などの事務を移す。厚労省から保育や虐待防止といった業務を移管する。
300人規模の体制を目指す。子どもに関わる仕事に就く人に性犯罪歴がないかを確認する「日本版DBS」の導入も検討する。
野田聖子少子化相は25日、内閣府で記者団に「強い司令塔機能を有し、子どもの最善の利益を第一に考え、常に子どもの視点に立った政策を推進する組織だ」と述べた。
幼稚園と保育所の制度を統合する「幼保一元化」は見送った。学校教育法は幼稚園を「学校」と位置付ける。
文科省は小学校への円滑な就学を考慮し、幼稚園をこども家庭庁に移管しないほうがよいと主張した。自民党内にも反対意見があった。
淑徳大の柏女霊峰教授は「通常時間外に子どもを預かる『預かり保育』を実施する幼稚園が増えるなど、幼稚園と保育園の役割はほとんど同じになってきている」と指摘する。
こども家庭庁と文科省のあいだで縦割りの弊害が生じないか懸念が残る。こども家庭庁の専任閣僚は他省庁への勧告権を持つが強制力はない。
予算の拡充も見通しが不透明だ。経済協力開発機構(OECD)によると、日本の子育て支援への支出は17年度で国内総生産(GDP)比1%台にとどまる。スウェーデンや英国の半分ほどにすぎない。
岸田文雄首相は1月に衆院予算委員会で「将来的に子ども予算の倍増を目指したい」と訴えた。
東京通信大の増田雅暢教授は「数千億円程度なら予算の組み替えで捻出できる。数兆円規模が必要なら『こども家庭国債』といった国債の発行も検討すべきだ。先行投資になる」と語る。