防衛産業「投資回収可能な構造に」 輸出規制の緩和促す
防衛を考える・有識者報告書(1)

政府の防衛費増額に関する有識者会議が22日に公表した報告書は政府全体で防衛力強化に取り組む方策を挙げた。防衛産業の基盤の維持もそのひとつだ。「投資を回収できるようにし、少なくとも産業を持続可能なものとしなければならない」と明記した。

「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」は「防衛産業は防衛力そのものだ」と提起した。
防衛省・自衛隊は国営の工場を持たない。民間企業が防衛装備品の開発や製造、修理、補給を担う。国内で弾薬の生産や艦艇の修理などができなければ有事に戦闘を続ける継戦能力に関わる。
防衛費のうち装備品の調達や整備などを含む物件費をみると2013年度に91%だった国内調達の比率が21年度には76%まで減った。海外製の高額な装備品の購入が目立つ。
報告書は国内勢の撤退が相次ぐ現状を改めるため、投資環境を整える重要性を指摘した。「日本政府だけが買い手である構造から脱却し海外に市場を広げる」よう提唱した。
輸出ルールを定める防衛装備移転三原則やその運用指針による制約をできる限り取り除くよう求めた。装備品の輸出を通じて、基本的な価値観を共有する国々の防衛努力に貢献する姿を描く。
「『自由で開かれたインド太平洋』というビジョンの下、地域の平和と安定を確保し、日本にとって望ましい安全保障環境の創出につなげる」。このような視点を持つよう訴えた。
自民党内には相手国を3つのカテゴリーに分け、それぞれで輸出取引の条件を変える案などがある。政府・与党は具体的な要件緩和策を協議する。