風評被害の賠償基準公表、東電 福島原発の処理水放出で

東京電力は23日、福島市で記者会見し、福島第1原子力発電所の処理水海洋放出で風評被害が出た場合の賠償基準を公表した。請求者の負担軽減のため、官公庁などの統計データによる全国状況と比較して被害を推認できれば賠償することが柱。来年春以降とされる放出開始の後、業種や地域を限定せずに賠償請求の受け付けを始める。
風評被害の推認には、農業、漁業では東京都中央卸売市場の「市場統計情報」、観光業では観光庁の「宿泊旅行統計調査」を活用。その上で処理水の放出前後の価格差に放出後の販売量を掛けるなどして被害額を算定する。統計データで被害を判断できない場合は事業者ごとに実態を調べる。
東電は基準公表に先立ち、原発事故の賠償に関する福島県の対策協議会で農林水産など各種業界団体や自治体に説明。出席者から「農業、漁業以外では被害算定が難しく、賠償のハードルが高くなる」との懸念が示された。東電の高原一嘉福島本社代表は「基準をベースに被災者の立場に立って話し合いたい」と答えた。
この日の協議会では、原発事故による避難者などの賠償対象を広げた国の基準「中間指針第5次追補」の説明も行われた。県町村会会長の遠藤智広野町長は「復興は道半ばだ」として、指針を適宜見直すよう文部科学省の担当者に求めた。〔共同〕