日米連携、経済安保に重点 次世代半導体で作業部会

日米両政府は23日、首脳会談を開き、共同声明や競争力強化・気候変動対策についての共同文書を発表した。声明には次世代半導体の開発に向けて作業部会を設立することを明記した。対中国を念頭に経済安全保障の重要性が高まっており、日米の連携を強化する方針を共同文書で重点的に盛り込んだ。実務的に意味のある連携に育てられるかが課題となる。
経済版「2プラス2」、7月に初開催
日米共同声明には閣僚級の経済版「2プラス2」を7月に初開催すると記した。「経済安全保障を強化するためのさらなる協力を追求していくことで一致した」と強調した。作業部会では回路線幅2ナノ(ナノは10億分の1)メートルより進んだ先端半導体の開発に取り組む。半導体の生産や供給不足への対応でも協力する。
中国による新疆ウイグル自治区での人権弾圧や香港を巡る動向について懸念を共有した。供給網上の人権尊重の重要性も指摘し「強制労働をなくすことの必要性を再確認し、企業が取り組みやすい環境を促進する」と言及した。
重要鉱物の供給網の強化も進める。スマートフォンや電気自動車(EV)に欠かせないレアアース(希土類)の確保などを念頭におく。採掘も精錬過程も中国が強いためだ。
エネルギー安全保障では、岸田文雄首相が米国の液化天然ガス(LNG)が果たす重要な役割を指摘。増産に向けた米国産業界による投資を歓迎した。欧州や日本がロシアからのガス輸入を減らすには米国の供給強化が欠かせないとみている。

小型原子炉の推進で協調
途上国でクリーンエネルギーを促進し、アジアのパートナー国がエネ安保を強化する支援を探求することでも合意した。小型モジュール炉(SMR)など革新原子炉の開発と世界展開を加速することも掲げた。
声明とあわせてまとめた共同文書の一つは、日米両政府が2021年4月に合意した「日米競争力・強靱性(コア)パートナーシップ」で、今回の首脳会談にあわせて進展をまとめた。蓄電池の供給網の情報共有や協力を進める方針を打ち出した。
この文書とは別に「日米気候パートナーシップ・ファクトシート」も発表した。再生可能エネルギーや水素、原子力といった分野で両政府が参加する作業部会を設け、導入拡大や開発に取り組む。文書では名指ししていないものの、二酸化炭素(CO2)の最大の排出国である中国を意識した対策も盛り込まれた。
世界の主要企業が脱炭素製品の調達を約束する米国と世界経済フォーラム(WEF)の枠組み「ファースト・ムーバーズ・コアリション(FMC)」に日本が政府パートナーとして参加する。
FMCはまだ価格が高い脱炭素製品を有志の企業が優先して調達することで需要創出と技術開発を促す。米アマゾンやアップル、ボーイングなど約30社が参加している。日本企業の参画を後押しする。
両国はCO2排出量の多い石炭火力発電所から電力システムを最大限に脱炭素化させるため、技術や政策を30年代に迅速に拡大することでも一致した。
近く開く主要7カ国(G7)の気候・エネルギー・環境相会合を前に議長国のドイツは30年までの石炭火力の全廃を求め、米国は「30年代まで」への修正を要求している。日本は「全廃」の表現の削除を求めている。今回の文書は石炭火力の廃止には触れていないが、米国が主張する「30年代」の表現を使い、対策を加速する方針に触れた。