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再エネ「最優先に導入」 基本計画、原発議論深まらず

(更新)

政府は22日、新たなエネルギー基本計画を閣議決定した。再生可能エネルギーを「最優先に最大限導入する」方針を掲げた。岸田文雄首相が選ばれた自民党総裁選では、原子力政策の見直し議論も出たが、菅義偉前政権が7月にまとめた計画案をほぼ踏襲した。脱炭素化を進めるためにも、中長期に原発をどう活用していくかの議論が必要になる。

計画は2030年度の電源に占める再生エネの比率を19年度実績の18%から36~38%にまで引き上げる。原発は6%から20~22%にするが、これまでの計画の30年度の目標値を据え置いた。

政府が計画の内容を変えずに決めたのは理由がある。31日に英国で始まる第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP26)で、各国は温暖化ガスの削減目標や実行計画を示さないといけない。基本計画の内容を大きくかえれば与党の了承を得るプロセスなどでCOP26までに間に合わなくなる可能性があった。

政府は22日、30年度に温暖化ガスの排出量を13年度比46%減らす目標を国連気候変動枠組み条約の事務局に提出した。

新たな基本計画では30年度の電源に占める石炭火力の割合を19%と見込む。石炭への依存度は先進7カ国(G7)の中でも高く、批判が出かねない状況だ。そんな中で閣議決定が遅れ、目標や計画すら示せない事態に陥れば脱炭素の議論で取り残されると懸念した。

とはいえ、9月の自民党総裁選で、候補者の河野太郎氏が原子力政策の要である核燃料サイクル政策についてコストや実現性の観点から見直しを提起したり、高市早苗氏が原発の建て替えの必要性を訴えたりした。岸田氏は総裁選で基本計画は原案から見直さない意向を示していた。

衆院選が19日に公示になり、各党は公約に原発を今後どう使うかを盛り込んだ。脱炭素社会をどう目指すかの観点からも原発は重要な論点の一つとなっている。政府は計画の原案を7月に公表したが、今春に策定する案も一時あった。原発の建て替えの是非を巡って政府・与党内の調整に時間がかかり見送ったものの、煮詰まらなかった。

岸田政権の発足後は、自民党の甘利明幹事長が小型炉を活用した形での原発の建て替えを提起しているが、新計画には明確な記述はない。

そもそも原子力政策では、東京電力福島第1原発の廃炉をどう着実に進めるかや、実行段階へと進まない核燃料サイクル、放射性廃棄物の最終処分地など、政府が議論を避けてきた課題は多い。原発を使う、使わないにかかわらず廃棄物の処分など解決しなければならない問題もある。

今回の計画では、30年度の原発比率を達成するには、電力会社が原子力規制委員会に稼働を申請した全27基の稼働が前提となる。東京電力福島第1原発事故もあり、稼働するのは10基にとどまり、ハードルは高い。

どの政党が勝つにしても、総選挙後のエネルギー政策の羅針盤が今回の計画のままでは、電力の安定供給と脱炭素を両立できるかは見通せない。原発を使う場合も安全対策などの費用はかかるが、使わずに再生エネを想定以上に増やす際にも送電網の増強費用や蓄電池の導入コストなどがかかる。現実を見据えた議論が求められる。

太陽光の発電コスト、日本は米中の2倍超

エネルギー基本計画で定めた2030年度の電源構成を実現できるかも課題だ。従来の計画で30年度に22~24%とした再生エネ比率を大幅に引き上げたためで、14~16%を見込む太陽光の大規模化などがカギを握る。

日本では太陽光パネルの置き場所が限られることなどから当初、比率は30%前後と見込まれていた。30年度の削減目標の実現のため上積みしたが具体的な計画は乏しい。

コストも課題だ。国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によると、日本の太陽光の発電コストは1キロワット時13.5円(1ドル=114円換算)。5円の中国や6.5円の米国の2倍超で、7.3円のフランスや7.6円のドイツより8割高い。企業や家庭に導入の利点がみえにくい。

平地が少ない日本は太陽光発電の整備費が割高だ。改正地球温暖化対策推進法の促進区域では、地元との調整を経て発電所を設置しやすくなる。こうした仕組みなどで効率を高める必要がある。

排出量の多い石炭火力は30年度に19%を見込むが、国際的な風当たりは強い。原発や再生エネの発電が不足すれば火力に頼らざるをえない。脱炭素化を実現できないリスクが高まる。

(気候変動エディター 塙和也、新井惇太郎)

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