有識者「国葬の基準難しい」 半数が「国会の関与必要」 - 日本経済新聞
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有識者「国葬の基準難しい」 半数が「国会の関与必要」

政府の検証結果

政府は22日、有識者への意見聴取をもとに安倍晋三元首相の国葬で生じた課題・論点をまとめた。対象者の基準や国会の関与、法的根拠などを国会で議論する材料にする。対象者の基準を策定するのは難しく、事例に応じ柔軟に判断すべきだとの主張が目立った。

国葬の対象者の決め方を定めた法律はない。戦前は国葬令で皇族や「国家に偉勲ある者」が対象だった。戦後、日本国憲法の施行に伴い国葬令は失効した。いまは時の内閣がその都度判断する。

慶大の細谷雄一教授は「首相経験者の国葬は政治や社会情勢の影響を大きく受ける。一般的な基準を策定するのは困難で、柔軟な対応が必要だ」と論じた。

「首相経験者は全員国葬とするルールを制定すべきだ」(立命館大の上久保誠人教授)との発言もあった。客観的な指標を決めず、国会での超党派の合意などを一つの基準にすべきだとの見方もあった。

国会の関与や野党などとの事前調整は憲法や政治学の専門家ら21人の有識者のおよそ半数が必要だと指摘した。国葬の執行は「行政権の範囲」で国会の関与は不要との意見もあった。

京大の曽我部真裕教授は「葬儀は性質上、静かな環境が求められ幅広いコンセンサスが必要だ。国会の事前の関与が望ましい」と指摘した。

東大の北岡伸一名誉教授は「国会の多数で選ばれた首相が国葬の実施を決め、国会へは事後報告でよい」と唱えた。

7月8日に安倍氏が銃撃され死去後、岸田文雄首相は6日後の14日に国葬の開催を表明し、22日に閣議決定した。この間、国会に可否を諮らなかった。政府は内閣府設置法の所掌事務の「国の儀式」を国葬の法的根拠にした。

龍谷大の石埼学教授は「行政権の行使で、法律は必要ないと政府がはっきり言うべきだった」と主張した。成蹊大の武田真一郎教授は「重要事項の実施は法律に基づくべきだ」との見解を示した。

海外要人の参列に合わせた「弔問外交」の成果も有識者に聞いた。阪大の坂元一哉名誉教授は「安倍氏が残した外交路線を続けていくことを示した点に意義があった」と評価した。

東京都立大の詫摩佳代教授は「直後にアジア太平洋経済協力会議(APEC)や20カ国・地域(G20)首脳会議があり、具体的な成果を見いだすのが難しい」と記した。

なぜ国葬なのか首相らによる説明不足も有識者は問題点に挙げた。7月の決定から9月27日の国葬までの期間が2カ月ほど空いた。国葬への批判論が高まった。有識者から「実施が遅きに失した」との分析も出た。

政府は12月22日、安倍氏の国葬の費用の概数値は12億円ほどだったと公表した。10月に公表した速報値およそ12億4000万円から大きく変わらなかった。会場の警備費や海外要人の接遇費などを含む。

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安倍晋三元首相の国葬が2022年9月27日午後2時から東京都千代田区の日本武道館で行われます。最新ニュースや解説記事をまとめました。

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