規制委、処理水計画を認可 東電は23年春放出めざす

原子力規制委員会は22日午前に臨時会議を開き、東京電力福島第1原子力発電所の事故でたまる処理水を海洋放出する設備計画を認可した。規制委の審査に正式合格したため、東電は立地自治体の事前了解を得た上で本格的な設備設置工事に着手する。政府の方針に基づいて2023年春ごろの放出開始をめざす。
規制委は5月に事実上の合格証である「審査書案」をとりまとめ、一般の意見を募っていた。6月17日までの約1カ月間に寄せられた1200を超える意見を踏まえて、審査書を決定した。
東電は当初、22年6月に放出設備の工事を始める見通しを示していた。審査が想定より2カ月ほど遅れ、23年春ごろの放出に間に合うかは微妙な情勢だ。処理水をためるタンクは同年の夏から秋に満杯になる見通し。
放出に向けた工事では、東電は陸側に処理水を薄めるための海水をくみ上げるポンプや配管を設置する。地震やトラブルなどで希釈前の汚染水を誤って流さないために複数の緊急遮断弁も備える。海側では放出口に続く1キロメートルの海底トンネルを掘削する工事も実施する。

工事に着手する前に原発が立地する福島県と大熊町、双葉町が工事内容を了解する必要がある。福島県と2町は近隣市町村などでつくる協議会で審査書の内容を議論する。県と2町は協議会の意見を反映した報告書をとりまとめ、了承するかどうかを判断する。
実際の海洋放出までに地元関係者の理解も必要だ。政府と東電は海洋放出に反対する福島県漁業協同組合連合会(福島県漁連)に対して「関係者の理解なしにいかなる処分も行わない」と約束した。政府は処理水放出に伴う風評の影響に素早く対応するために300億円の基金創設を決め、漁業後継者を育てる支援策も検討する。
福島第1原発では1~3号機の原子炉建屋に流れ込んだ地下水や雨水が「デブリ(溶融燃料)」と触れて、1日に約130トンの汚染水が発生し続けている。東電は専用装置「ALPS」で大半の放射性物質を浄化処理し、敷地内に設置した1000基を超えるタンクにためており、廃炉作業の妨げとなっている。
処理水には環境基準を上回るトリチウムが含まれ、そのまま海に流せない。政府は21年4月、2年後をめどに処理水を海水で薄めて環境基準以下にして、海に放出する方針を決定した。
規制委の更田豊志委員長は計画通りに放出してもタンクの処理水が減る速度が遅い可能性があるとして「東電は汚染水の発生量を減らす努力をすべきだ」と指摘した。
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