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米の高速炉で協力覚書、原子力機構 高効率に廃棄物削減

日本原子力研究開発機構と三菱重工業は26日、米国の原子力新興企業による高速炉の実証計画に協力すると発表した。高速炉は次世代の原子力発電所の一つ。使用済み核燃料を使って高効率に発電し、核の廃棄物を減らしやすい。実用化は遠いが、日本は高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉を決めており、米国の計画に関与して知見の獲得や専門人材の育成につなげる。

原子力機構などが26日、米マイクロソフト創業者のビル・ゲイツ氏が出資する米テラパワーと「開発協力の協議を進めることに合意した」との覚書を交わした。

同社は米国西部ワイオミング州で出力34万5千キロワットの実証段階の高速炉を建設する計画だ。米エネルギー省も支援し、2028年の運転開始を予定する。この高速炉は基本的に核燃料サイクルを想定していないという。

同社の高速炉ともんじゅに共通するのは冷却材に液体ナトリウムを使う点だ。ナトリウム内に核燃料を設置したり、使用済み燃料を取り出したりする技術の導入などでの協力が想定されている。

高レベル放射性廃棄物(核のごみ)は強い放射線を出し続ける放射性物質を含む。高速炉は高速の中性子による核分裂反応を使うことで通常の原発よりも高効率でプルトニウムを燃やせ、寿命が長い放射性物質を短寿命の物質に変換。核のごみの容量が減るとされる。

経済産業省によると通常の原発を使うと放射能レベルを天然ウランと同水準まで低減するのに8000年かかるが、高速炉が実現すれば300年まで縮められるという。

日米協力では高速増殖炉の実験炉「常陽」や原子力機構の試験施設「アテナ」(いずれも茨城県)の活用も検討。三菱重工は高速炉の燃料交換や、破損燃料の検出装置の開発で技術支援する。

高速炉は核燃料サイクルの本命とされた高速増殖炉と違い、使った以上の量のプルトニウムの回収はできない。日本の原子力関係閣僚会議は18年決定の戦略ロードマップで「21世紀後半の本格利用」を盛り込んでいる。

高速炉の実用化までの道は遠い。もんじゅはトラブルが相次ぎ、ほとんど稼働できないまま16年に廃炉が決まった。日本はフランスの高速炉「アストリッド」計画への協力に軸足を移したが、仏政府は計画を凍結した。具体的なプロジェクトがない状況が続いており、米国との協力を決めた。

次世代原発では小型モジュール炉(SMR)は世界で約70基が開発中で技術的に先行する。新興原発メーカーの米ニュースケール・パワーは出力7万7千キロワットのSMRを29年ごろから順次動かす計画で実用化が近い。

日本は東京電力福島第1原発の事故後、安全基準が厳しくなったことから原発の再稼働は進んでいない。新設や建て替えの議論も避けている。原子力産業の担い手が細る中で、海外との協力で技術力を維持する狙いだ。

核燃料サイクルも、使用済み核燃料からプルトニウムを取り出す再処理工場の完成時期は25回延期され、現行目標の22年度上期の完成も難しい。核のごみの最終処分場も決まっていない。世界では脱炭素の流れから発電時に二酸化炭素(CO2)を排出しない原発活用の動きが広がっている。日本でも議論を経て戦略を早期に定める必要が高まっている。

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