立民、長射程ミサイル保有容認 外交・安保戦略を決定 - 日本経済新聞
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立民、長射程ミサイル保有容認 外交・安保戦略を決定

立憲民主党は20日の党会合で「外交・安全保障戦略の方向性」を決めた。ミサイルの長射程化など能力向上は必要だと明記した。ミサイル発射拠点などをたたく「反撃能力」の保有を巡っては防衛3文書で示した政府の方針を否定した。

立民の次の内閣(ネクストキャビネット=NC)の閣議で決定した。反撃能力は「自民党、公明党合意に基づく政府の反撃能力には賛同できない」と記した。

政府が想定している「相手が攻撃に着手した段階の行使」に反対した。米国など日本と密接な関係を持つ国・地域が攻撃され日本の存立が脅かされる「存立危機事態」になっても、集団的自衛権としての行使を認めないとの見解で一致した。

長射程ミサイルに関しては反撃能力の具体的な手段になる。立民は今回、能力の保有の是非と書き分けた。ミサイル能力の向上の目的は「日本島しょ部などへの軍事的侵攻を抑止し、排除するため」と強調した。

そのうえで反撃能力の保有に「政策的な必要性と合理性を満たし、憲法に基づく専守防衛と適合するものでなければならない」と条件をつけ、一部容認した。

玄葉光一郎党ネクスト外務・安全保障相が党内の議論を主導した。玄葉氏は会合後、記者団に「必ずしも保有、行使一般を否定しているものではない」と語った。

外交・安保戦略は全体として「平和創造のための外交を展開し、着実に安保環境を改善する」と掲げた。「時代の変化に対応した質も高い防衛力の整備を通じ、現実的な安保政策を推進する」とも訴えた。

日本を取り巻く安保環境への認識も示した。「台湾問題が日本に波及し、重要な影響を及ぼす事態を想定しておかなければならない」と触れた。中国との関係は「日本および国際秩序への挑戦は深刻な懸念事項だ」と指摘した。

政府の防衛費増額は「数字ありきで合理性に欠ける。大幅に増額すると無理が生じる」と評価しなかった。東日本大震災の復興特別所得税を引き下げ、所得税の新たな付加税を設けて増額分の財源にする手法は「論外だ」と批判した。

立民は戦略に基づき、通常国会で政府の安保政策をただす。反撃能力をはじめ政府から詳細な説明と審議を求めるとし「立民は責任政党として国会での議論をリードしていく」と主張した。

笹川平和財団の渡部恒雄上席研究員は立民の方針を評価した。反撃能力を巡り「ミサイルの長射程化は結果的に反撃能力の保持にもつながる。政府の方針は認めないものの野党として現実路線を打ち出したことは画期的だ」と話した。

▼反撃能力 相手のミサイル発射拠点などをたたく能力を指す。政府は相手が攻撃に着手した段階で行使できると想定する。「敵基地攻撃能力」とも呼ばれてきたものの自民党が4月に名称変更を提言した。政府は16日に閣議決定した国家安全保障戦略など新たな防衛3文書に初めて明記した。

「現実路線を評価」 笹川平和財団上席研究員・渡部恒雄氏

立憲民主党が容認したミサイルの長射程化は結果的に反撃能力の保持にもつながる。反撃能力は政府の方針は認めないものの、野党として現実路線を打ち出したことは画期的で評価できる。

中国や台湾有事を巡る現状認識も現状に合っている。「台湾有事は起こらない」と考える人に万が一を想定する必要性は理解を得られるだろう。

与野党で考え方の土台が一致している方が、財源などの論点で建設的な議論が期待できる。政府は国会でより明確な説明が求められる。野党の正しい姿に近づいているのではないか。

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