生態系保全の30年目標、実行力が課題に COP15閉幕 - 日本経済新聞
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生態系保全の30年目標、実行力が課題に COP15閉幕

世界の生態系保全の方策を話し合う国連の生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)は20日未明(日本時間同日午後)、中断の形で実質的に閉幕した。19日には2030年まで世界が取り組む23項目の目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組み」を採択した。20年までの目標は20項目すべてが未達だった。新目標の達成に向け、各国の実行力が問われる。

COP15は20年の中国での開催が新型コロナウイルスの影響で延び、今年12月7日にカナダで対面の会合を開いた。各地の地域代表を決めるのが定例だが、ロシアが中東欧の代表決定で異論を唱えたため閉幕予定日の20日に中断した。そのまま会合は終わり、今後、対応を検討するという。

19日に採択した目標の柱は、地球上の陸と海をそれぞれ30%以上保全する「30by30」だ。日本は国立公園などとして陸の20.5%、海域の13.3%を保護している。今回の合意に基づき拡大を検討する。

生物の保全に官民で年2000億ドル(約26兆円)の資金を投じることでも合意した。先進国企業が途上国に生息する生物の遺伝情報を産業応用した場合に利益を配分する仕組みをつくることで折り合った。ただ利益配分は議論が深まらず、2年後のCOP16で最終決定することになった。

東京大学の香坂玲教授は新たな枠組みの合意について「意義は大きいが、南北の対立が目立ち、資金などの面で不確実な要素が残った」と話す。

生態系の破壊は世界の国内総生産(GDP)総額の半分にあたる44兆ドルに影響をもたらすとの分析がある。温暖化対策を進めなければ生物への影響が出る背中合わせの関係だが、気候変動ほど国民や企業の認識は広がっていない実態がある。

企業にとっては対策を通じて追加コストが生じる懸念がある。採択された枠組みには大企業や多国籍企業、金融機関が環境に与える負荷を開示する仕組みづくりを進めることも盛り込まれた。目指していた義務化は途上国の反発などで見送られ、実効性は見通せない。

情報開示のルールが整えば金融機関による投融資判断に活用され、対策が進むと見込まれている。気候変動分野では既に情報開示のルールが整備され、石炭関連企業を投資対象から外す動きが出るなど、ESG(環境・社会・企業統治)投資が世界の脱炭素を促した面もある。

10~20年までの「愛知目標」は取り組みが停滞し、化学肥料の使用減、外来種の抑制など20項目のうち完全達成は「ゼロ」と評価された。その間、生物種の絶滅が進むなど状況は悪化した。

この反省を踏まえ、COP15では各国が新たな枠組みを踏まえた国家戦略を2年後のCOP16までに策定し4年後のCOP17までに実施状況を報告することも合意した。

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