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温暖化ガス、35年に19年比60%削減を IPCC報告書

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国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は20日、現状の評価と必要な対策をまとめた第6次統合報告書を公表した。産業革命前からの気温上昇を1.5度以内に抑える国際枠組み「パリ協定」の目標の達成には、温暖化ガス排出量を2035年に19年比で60%減らす必要があると提示した。各国の従来の削減目標は「極めて不十分」と警鐘を鳴らした。

IPCCは世界の専門家で組織する。おおむね5〜7年ごとの統合報告書は最先端の科学的知見に基づき、各国の政策や国際交渉に強い影響力を持つ。今回は新型コロナウイルス禍もあって9年ぶりの公表となった。

人間の活動が地球温暖化を引き起こしてきたことは「疑う余地がない」と明記した。1850年以降の累積排出量の4割超は直近20年間分だ。11〜20年の世界の平均気温は1850〜1900年を既に1.1度上回る。

気温上昇が1.5度を超えると異常気象のリスクが高まる。回避には温暖化ガスの累積排出量の増大を二酸化炭素(CO2)換算で5000億トンにとどめなければならない。今のペースでは10年以内に許容量に達する恐れがある。排出量を35年に19年比60%、40年に69%、50年に84%減らす必要があると分析した。

先進国は今世紀半ばの実質排出ゼロに向けて30年に10年比45%の削減をめざしてきた。日本は30年度に13年度比46%減の目標だった。各国とも今回の報告書を踏まえ、35年の目標を25年までに国連に提出する。現状より上積みが必要になる。

国連のグテレス事務総長はビデオメッセージで「気候の時限爆弾が針を進めている」と危機感を示した。脱石炭によって先進国は35年、他の国は40年までに発電による排出を実質ゼロにするよう求めた。

日本はエネルギー基本計画上、30年度も2割を石炭火力に依存する。炭素を値付けして排出に負担を求めるカーボンプライシングの本格導入も30年代と遅い。35年に温暖化ガスを19年比で60%減らすといった新たな目標水準に合わせるには大胆な政策転換が必要になる。

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