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少子化「予算倍増」先行、試される抜本改革 政府初会合

政府は19日、「こども政策の強化に関する関係府省会議」の初会合を開いた。4月のこども家庭庁の発足までに、子育て家庭への経済支援や育児休業制度の拡充などを議論する。新型コロナウイルス禍で日本の少子化は加速した。関連予算の「倍増」論が先行するなか、誰もが安心して産み育てられる抜本改革が求められる。

新たな会議は「異次元の少子化対策に挑戦する」とした岸田文雄首相の指示を受けて設けた。座長の小倉将信少子化相は会議で「かつてない踏み込んだ大胆な対策に関するたたき台をつくっていきたい」と述べた。

岸田首相は子ども関連予算の「将来的な倍増」を表明した。議論の柱として①児童手当など経済的支援の強化②幼児教育・保育サービスの強化と子育て家庭向けサービスの拡充③働き方改革の推進と制度充実――を打ち出した。会議で具体策をまとめる。

岸田首相は19日収録のBSテレ東番組で、6月ごろにまとめる経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)に「財源も含めて大きな方向は書き込む」と説明した。自民党の茂木敏充幹事長は同日の党会合で「この10年が日本の少子化を反転できるかどうかの最後のチャンスだ」と訴えた。

政府が「異次元」と銘打って少子化対策を急ぐ背景には、コロナ禍で加速した出生数の減少がある。2022年の年間出生数(日本人のみ)は統計上初めて80万人を割るのが確実で、コロナ禍前の19年から1割ほど減りそうだ。

第一生命経済研究所の星野卓也・主任エコノミストの試算によると、過去3年の出生率の低下ペースが続いた場合、30年の出生数は55万人まで減る。星野氏は「子どもを持つことの金銭的ハードルが高くなった」とコロナ禍以外の要因を指摘する。

日本は低成長が続き、賃金上昇率も低迷している。内閣府がまとめた少子化に関する意識調査で「子どもを増やしたくない理由」として「お金がかかりすぎる」をあげた人は日本で5割を超え、2割台だったフランスやドイツを上回った。

金銭的な不安がハードルになっているとの声は多く、足元で希望する子どもの数は減少している。「希望出生率」について、中曽根康弘世界平和研究所の木滝秀彰・主任研究員の試算は1.59だった。政府は過去の統計などをもとに1.8と推計しており、出産への意欲の後退が進んでいる。

星野氏は具体策として「乳幼児期だけでなく大学まで含めた教育費への支援や、子育て世帯への住宅支援が求められる」と話す。大正大学の小峰隆夫教授は「同一労働同一賃金やジョブ型の導入で女性がいったん辞めても復職しやすい雇用制度の見直しも必要だ」と強調する。

予算の倍増に向けては財源の確保が求められる。日本は高齢化に対応するため医療や介護の充実を優先してきた。年金も含め、給付と負担のバランスを見直す議論が欠かせない。

社会保険料からの拠出や消費増税などで財源を捻出する案が取り沙汰されるものの、道筋は明らかになっていない。小峰氏は「赤字国債で対応すれば、将来世代への負担の先送りにしかならない。長い目で見れば、少子化をかえって助長しかねない」と語る。

少子化に直面してきた欧州は男性の育児参加や育児中の女性が働きやすい環境づくり、多様な家族形態を容認する制度設計を進めてきた。フランスやデンマーク、スウェーデンでは婚外子が一般的で、フランスは1台後半の出生率を保つ。

家族の多様な形を受け入れる社会が少子化の抑制につながっているとの指摘もある。異次元の少子化対策に向けては日本の慣習を見直すほどの改革論議も避けて通れない。

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