/

岸田首相の内外記者会見での発言詳報

岸田文雄首相の19日の記者会見の発言の詳報は次の通り。

【冒頭発言】

8日間にわたり東南アジア諸国連合(ASEAN)関連首脳会議、20カ国・地域首脳会議(G20サミット)及びアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に出席した。この一連の会合は世界主要国の首脳が対面で集まる貴重な機会だ。米国のバイデン大統領、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席、韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領をはじめ、多くの首脳と文字通り膝を突き合わせて、主張すべきは主張しながら、協力と信頼を深めることができた。

ウクライナ侵略や東アジアにおける地域情勢の緊迫化で、世界の平和秩序は大きな曲がり角を迎えている。国民の皆さんの不安も大きくなっている。 21世紀の世界の中で日本を守り日本国民の安心を保つ。この政治の最大の使命を推し進めていく上で大事な一歩を踏み出すことができた1週間だったと振り返っている。

いかなる意味で「大事な一歩」だったと考えているか。まず主な2国間首脳会談について申し上げる。

バイデン大統領との日米首脳会談では、強固な日米同盟の役割について改めて認識を共有し、地域・国際社会の平和と繁栄のため、その抑止力・対処力の一層の強化を図ることで一致した。バイデン大統領及び尹大統領との間で実施した日米韓首脳会談では、北朝鮮による挑発行為が続き今後更なる挑発行為も想定される中、ミサイル警戒データをリアルタイムで共有することなど、引き続き日米韓で連携して対応していくことで一致した。

また昨日の北朝鮮による大陸間弾道ミサイル(ICBM)級弾道ミサイル発射を受けて急きょ開催された日米韓とオーストラリア、ニュージーランド、カナダによる会合においても緊密に連携していくことを確認するとともに、今回の弾道ミサイル発射を最も強い言葉で非難し、断じて容認できないとの点において一致した。

それぞれ約3年ぶりとなる日中、日韓首脳会談も行った。いずれも様々な課題はあるものの両首脳とじっくりと建設的な意見交換を行うことができた。初めて対面で会談した習主席とは日中関係の大局的な方向性とともに、課題や懸案、協力の可能性について率直かつ突っ込んだ議論を行った。

その上で「建設的かつ安定的な日中関係」の構築に向け、引き続き首脳レベルを含め緊密な意思疎通を行っていくことで一致した。ウクライナ情勢についても核兵器を使用してはならず、核戦争はおこなってはならないとの見解で一致した。

尹大統領とは北朝鮮問題や自由で開かれたインド太平洋の実現に関して連携していくことを確認し、また2国間の懸案の早期解決を図ることで改めて一致した。

一連の国際会議を通じて、国際社会に毅然とした前向きなメッセージを出せたことも「大きな一歩」と考える。私は日本と世界の平和と繁栄を実現するため、3つの狙いをもって臨んだ。

この3つの狙いとは第1にロシアのウクライナ侵略に対する国際的連携の維持・拡大、第2にグローバルサウス(南半球を中心とする途上国)との関係強化、そして第3に北朝鮮情勢や東シナ海、南シナ海を含め、厳しさを増す地域情勢への対応だ。

第1の点についてロシアによるウクライナ侵略は国際秩序の根幹を揺るがす問題であり、引き続き関係国が連携をして断固として取り組む必要がある。

今回ロシアも参加するG20において、ほとんどのメンバーがウクライナでの戦争を強く非難した旨、そして日本が繰り返し訴えてきたロシアによる核の威嚇は断じて受け入れられない、ましてやその使用はあってはならない旨が盛り込まれた首脳宣言が発出されたことは、来年の主要7カ国(G7)広島サミットでの核軍縮に向けた議論にもつながるものでありこれを高く評価する。

またG20サミット中に起こったポーランドにおける爆発を受けてG7、北大西洋条約機構(NATO)の首脳が緊急参集し迅速に協調することができた。

第2の点について、ウクライナ情勢などを巡って生じつつあるともいわれる国際社会の分断を食い止めるため、グローバルサウスとの関係を強化する必要がある。

そのためASEAN各国やルワンダ、南アフリカ、チリなどの国々の首脳との意見交換の機会も活用しつつ、食料・エネルギー安全保障、気候変動、国際保健などに関する日本の取り組みを発信するとともに、法の支配に基づく国際秩序の維持強化がグローバルサウスの発展にとって極めて重要であるという点を強く訴えた。

そして第3の点について、地域の安全保障環境が厳しさを増す中、インド太平洋の平和と安定を守るため、各国と連携や対話を重ねていくことが重要だ。今回あらゆる機会を捉え、各国首脳に対して北朝鮮による前例のない頻度と態様での弾道ミサイル発射や東シナ海・南シナ海での一方的な現状変更の試みなどを含む安全保障環境や拉致問題に関する私の強い危機感を伝え、対応の必要性につき訴えてきた。

かつて池田勇人首相は「アジアの繁栄なくして、日本の繁栄はあり得ない」と述べた。来年は日ASEAN友好協力50周年の節目の年であり、12月をめどに東京で日ASEAN特別首脳会議を開催する。また日本はアジア唯一のメンバーとしてG7議長国を務め、アジアから選出された安保理非常任理事国となる。

私自身が先頭に立って日本自身の安全と繁栄のためにも「インド太平洋に関するASEANアウトルック」(AOIP)と本質的に原則を共有する「自由で開かれたインド太平洋」(FOIP)の推進などを通じて、引き続きアジアの繁栄、国際経済及び地球規模課題をはじめとする国際社会の諸課題に対応していく。

改めて今回それぞれの会議の議長を務めた、カンボジアのフン・セン首相、インドネシアのジョコ大統領、タイのプラユット首相をはじめとする各国政府の関係者の皆様に感謝申し上げる。

なお最後に一言、悪質な献金などの被害者救済に向けた新法について申し上げる。

新法については昨日、与野党6党の幹事長に「被害救済・再発防止のための寄付適正化の仕組み」の概要をお示ししたところ、6党として政府に法案の早期提出を求めるとのことであったと報告を受けている。被害者救済・再発防止に実効性のある仕組みをつくるため、政府として与野党からのご意見も参考にしつつ、できるだけ早期に法案を今国会に提出したいと思う。

【質疑】

──寺田総務相を続投させるお考えでしょうか。

経済対策の実現のための補正予算の成立、また世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の被害者救済に向けた新法の策定、また防衛力の抜本的強化、さらにはコロナ第8波への対応、ポスト冷戦期の次の時代の新たな国際秩序づくりなど、歴代政権が取り組んできたが道半ばとなっている難しい課題に一つ一つ結論を出していかなければならないと考えている。

この臨時国会さらには年末にかけてまさに勝負のときが続くと考える。これまで積み重ねてきた議論を必ず結果に結びつけていく。

そのためこの2か月間、政権の全ての力をこれら課題の一つ一つに集中していきたいと考える。そして政権全体のこうした方針を最優先していく。一方各閣僚においても各自に求められる説明責任は徹底的に果たしていただかなければならない。この2つの観点からどうあるべきか、これを首相として判断をしていきたいと思う。

――旧統一教会問題、防衛力強化の議論にどう対応しますか。与党内には来年通常国会前に人心一新を求める声もあります。

先ほども申し上げたように年末、さらには臨時国会に向けて難度の高い課題に挑戦していかなければならないと考えている。補正予算の成立などとあわせて、旧統一教会被害者救済に向けた新法の策定、防衛3文書の改定と防衛力抜本強化の具体策の合意など様々な課題に取り組んでいかなければならない。

それとあわせて、この激動する国際情勢の中で、新たな平和秩序、経済秩序をつくっていくために日本としてしっかりと発信をしていかなければいけない。日本が戦後最大級の難局に直面していると、国民の皆さんも直感的にわかっておられるんだと感じている。

内外の課題、難題に逃げずに正面から取り組むこと以外に岸田内閣が安定した政権運営を果たす道はないと覚悟している。新法を今国会に提出し成立させることについてどうか。提出をしたうえは、国会の審議に委ねなければならないわけだが、ぜひ結果につながるよう政府としても最大限の努力をしていかなければならないと考えている。

人事について内閣改造など質問があった。人事あるいは国会運営にも関わる質問だが、先ほど申し上げたように、難しい仕事を一つ一つ仕上げることを全てに優先させるためにどうあるべきなのか首相として判断をしていきたいと思う。

具体的なタイミングについても質問があったが、先ほど申し上げたようにこうした難度の高い課題に一つ一つ挑戦していくためにどうあるべきなのか。適切なタイミングを首相として判断していきたいということを申し上げている次第だ。

すべての記事が読み放題
有料会員が初回1カ月無料

セレクション

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン

権限不足のため、フォローできません