「五輪会場外の人出抑制を」 東大研究チームが試算

東京大学の研究チームは17日、東京五輪開催で生じる開放感など、会場外の間接的な影響で新型コロナウイルスの感染が拡大するリスクが高くなりうるとの試算を公表した。会場での感染などの直接的な影響は相対的に大きくなく、間接的な影響を抑えられれば会場に観客を入れても緊急事態宣言の再発令を回避できる可能性があるという。
研究チームは東大の仲田泰祐准教授(経済学)と藤井大輔特任講師(同)、東京財団政策研究所の千葉安佐子研究員らで構成。ワクチン接種は現状を踏まえて1日75万本をベースにした。接種が進めば重症化率が下がるため、東京都で緊急事態宣言が発令する目安は「1日1500人」が感染する状況にしている。
直接的な影響は五輪会場への往来によるもので、観客が帰りに飲食店などに立ち寄らない「直帰率」も考慮した。間接的な影響は開催による気の緩みやパブリックビューイング(PV)などによる人出増加などで、今年の花見シーズンと同様の状況を想定した。
試算によると、五輪会場の観客数はチケット販売率(42%)を会場の収容率として一律に適用すると、都内の観客数は1日平均15万人。観客を入れる直接的な影響としては、これまでのコロナ下のイベント経験から、会場での感染リスクは低いと想定している。

一方、帰りに飲食店に立ち寄る人が増えると感染者が増加する。直帰率が5割ならば緊急事態宣言の再発令は回避できる。仲田氏は「直帰率を高めることで、直接的影響は抑止できる」とみる。
試算では会場外でPVを開催するなどで今年の花見シーズンのように気が緩むと、間接的な影響で感染者は急増する。
仲田氏は「観客数の制限を緩めた結果、お祭りムードが高まるなど、直接的・間接的な影響は完全には切り離せない」としつつ「間接的な影響をいかに抑制するかが最重要課題」と指摘する。
これまで仲田氏らは五輪開催による感染拡大は海外からの入国の影響は小さく、国内の人出増の影響が大きいと試算している。