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首相記者会見の要旨 30年度男性育休85% 時短勤務も給付

岸田文雄首相が17日、首相官邸で開いた記者会見の要旨は次の通り。

【冒頭】

2022年の出生数は過去最少のおよそ80万人だった。30年代に入るまでの6〜7年が少子化傾向を反転できるかどうかのラストチャンスだ。

次元の異なる少子化対策を実現する。政府は3月末をめどにたたき台を取りまとめるべく検討を進めている。基本理念は▽若い世代の所得を増やす▽社会全体の構造や意識を変える▽すべての子育て世帯を切れ目なく支援する――の3つだ。

少子化の背景には未婚率の増加がある。原因の一つに若い世代の経済力が挙げられる。若い世帯の所得向上に取り組む。賃上げが持続的・構造的なものとなるよう三位一体の労働市場改革を加速する。

106万円や130万円の壁により労働時間をのばすことをためらう人がいれば世帯の所得が増えない。壁を越えても手取りの逆転を生じさせない支援のほか、制度の見直しに取り組む。

たたき台の第1の柱として子育て世帯への経済的支援を拡充する。兄弟姉妹の多い家庭の負担などを踏まえた児童手当の拡充や高等教育費の負担軽減など包括的に支援する。

「こどもファースト社会」の実現は社会全体の課題だ。みんなが参加して社会構造・意識を変える。地域ぐるみの住民参加型で子育て支援をすることで出生率を高めた自治体の好事例などを展開し、普及する。

政府も国立博物館など国の施設で子連れが苦労して並ぶことがないよう「こどもファスト・トラック」を設けて全国展開する。

企業も職場の文化・雰囲気を抜本的に変える必要がある。男女ともに希望通り気兼ねなく育休制度を使えるようにしなければならない。

男性の育休取得率の政府目標を引き上げ、25年度に50%、30年度に85%とする。企業ごとの取り組み状況の開示もする。最大のポイントは中小企業だ。応援手当など育休を促進する体制を整備する企業への支援を検討する。

国家公務員は男性育休の全員取得を目標に定める。25年度には85%以上が1週間以上の育休を取得するための計画をつくり実行に移す。

育休制度自体も充実させる。育児休業給付について、希望する場合に時短勤務時にも給付する。産後の一定期間に男女で育休を取得した場合、給付率を手取りの10割に引き上げる。

所得減少への支援は企業規模や雇用形態を問わずに実施する必要がある。非正規やフリーランス、自営業者向けに経済的支援を創設する。

すべての子育て世帯を切れ目なく支援する総合的な制度体系を構築する。すべての子育て家庭を等しく支援すること、妊娠・出産時から0〜2歳の支援、ひとり親家庭などに対してより一層の支援を行うことなどが必要だ。

支援を必要とする人に行政からアプローチする形に転換する。4月1日には「こども家庭庁」が発足する。6月の経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)までに、将来的な子ども予算倍増に向けた大枠を示す。

【質疑】

――子ども予算の倍増の規模を教えてください。財源に教育国債を検討すべきだとの意見があります。

まずは内容を具体化する。内容に応じて社会全体でどのように安定的に支えていくのか予算や財源について考えなければいけない。教育国債は安定財源の確保や信認確保の観点から慎重に検討する必要がある。

――自民党の調査会は子育て時期の奨学金返済の負担軽減などを提言しています。

結婚や出産などのライフイベントに応じた柔軟な返済が可能となるよう減額返済制度の見直しもしたい。

――子育て世帯に住宅支援をする考えはありますか。

子育て世帯にとって広さや利便性がある住まいを確保することは大きな負担だ。都市部を中心に住宅価格が上昇傾向にあり課題は大きい。公営住宅や民間空き家などの活用、住宅取得支援の充実などに取り組みたい。

――米銀シリコンバレーバンク(SVB)の破綻などの日本の金融機関や実体経済に与える影響をどのようにみますか。

足元の金融市場でリスク回避的な動きがあるが、欧米の金融当局が信用不安の影響を拡大させないため迅速な対応を講じている。日本の金融システムは総体として安定している。

内外の経済や金融市場の動向、実体経済や金融システムの安定性に与える影響などについて強い警戒心を持って注視したい。

――16日に韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領と夕食をともにしました。

日韓関係の正常化へ大きな一歩となる前向きな首脳会談ができた。信頼関係に基づき課題を乗り越えるべく、努力を未来に向けてやりたい。

たいへん楽しいお酒を飲んだ。個人的なことも含め、信頼関係を深める意味で大変有意義な会話ができた。

――中小企業に賃上げの波をどのように広げていきますか。

中小企業の賃上げ実現は重要な課題だ。政府として労務費の転嫁状況について業界ごとに実態調査し、転嫁のあり方について指針をまとめていきたい。賃上げの原資を確保するため生産性向上の支援も進めたい。

――放送法の政治的公平性の解釈を巡り政府として問題を検証する考えはありますか。

放送法を所管する総務省が責任を持って従来の解釈を変更することなく、補充的な説明をしたものだと承知している。この考え方は一貫して維持されている。

――4月23日に衆参5つの補欠選挙が投開票されます。

国政にも影響を与える可能性もある重要な選挙だ。勝敗ラインについては自民党の議席をしっかり守り抜き、拡大していくべく全力を尽くしたい。

――広島市で開く主要7カ国首脳会議(G7サミット)までおよそ2カ月です。広島での行程や招待国を教えてください。

世界に被爆の実相を伝えていくことは核軍縮に向けた取り組みの原点として重要だ。平和記念資料館への訪問をはじめしっかりと検討している。招待国や詳細な日程はまだ決まっていない。

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