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春季労使交渉始まる 経団連会長「物価重視で賃上げ」

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経団連と連合の労使トップが23日会談し、2023年の春季労使交渉が始まった。足元の物価上昇を受け、経団連の十倉雅和会長は「物価動向を重視しながら、企業の社会的責務として賃金引き上げのモメンタム(勢い)の維持・強化にむけた積極的な対応」を呼び掛けると訴えた。持続的な賃上げには、より良い待遇を求めて人材が移動する環境づくりも欠かせない。

十倉氏は会談の冒頭、歴史的な物価高の局面で迎えた交渉に触れて「デフレからの脱却と人への投資促進による構造的な賃金引き上げをめざした企業行動への転換を実現する、正念場かつ絶好の機会だ」と強調した。

連合の芳野友子会長は今回の交渉を「労使が力を合わせて日本の未来をつくりかえるターニングポイントとすべきだ」とした。「大企業だけでなく中小企業やパート、契約社員なども含めて日本全体で継続した賃上げを実現しよう」と求めた。

労使ともに賃上げに強い意欲を示すなかで、物価動向をどこまで反映できるかが焦点となる。総務省が20日発表した22年12月の消費者物価指数は、実質賃金の算出に使う総合指数(持ち家の家賃換算分除く)で前年同月比4.8%上昇した。通年でも前年比3%の高い伸びを示した。

岸田文雄首相は経済界に対して「インフレ率を超える賃上げの実現」を期待する。連合は定期昇給とベアをあわせて5%程度の引き上げを要求している。西村康稔経済産業相は23日の閣議後の記者会見で「特に収益が高い企業に対しては5%、さらにはプラスアルファの賃上げを期待をしたい」と述べた。

経団連集計の22年の賃上げ率は2.27%で4年ぶりに前年を上回ったものの、物価上昇の勢いに比べると開きがある。

今年の労使交渉でカギを握るのは、賃上げを実感しやすいベアの実現だ。経団連は経営側の交渉指針「経営労働政策特別委員会(経労委)報告」で、ベアについて「前向きに検討することが望まれる」と明記した。近年は「選択肢」として挙げるケースが多かったのに対し、今回は踏み込んだ対応を呼び掛けた。

賃金上昇の流れを波及させるには、労働者の7割を占める中小企業の取り組みが欠かせない。大企業に比べて収益力の劣る中小にとっては、原材料高によるコスト増を取引価格に転嫁して原資を確保する必要がある。日本商工会議所によると約9割の企業はコストを商品やサービス価格に十分に反映できていない。

賃金上昇に向けては成長産業に人材が移動しやすい環境づくりが課題となる。企業間の人材獲得競争が激しくなれば、待遇を上げないと優秀な人材を確保できない。経労委報告では働き手が主体的にキャリアを形成できるよう、制度面で能力開発やスキル向上を支援することが重要だと提起した。

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