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ガソリン市場にゆがみも 元売りに価格抑制の補助金

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政府が原油高対策でガソリンなど石油製品の元売り業者に補助金を出すと決めた。企業や家計の負担を抑えるためとはいえ、市場原理を軽視した措置は競争環境をゆがめる恐れがある。高騰のたびに補助金で抑え込むのか。他の商品も同様に対応するのか。補助金のばらまきは、本来必要な産業構造の転換の足かせにもなりかねない。

補助制度について元売り大手の出光興産は「時宜を得たものと評価したい」とコメントした。原油価格の上昇や円安の進展を「元売りで吸収するのは困難」という。

専門家からは疑問の声も出ている。石油流通に詳しい桃山学院大学の小嶌正稔教授は「元売りへの補助金ということにかなり驚いた」と話す。本来、ガソリンスタンドなどへの卸価格は自由に設定できる競争価格だ。それが政府に賛同して卸価格の引き下げを約束する元売りだけ補助金を受け取るようになる。

今回の措置は「かなりアクロバティック」と経済産業省幹部も認める。海外でも同様の補助はほとんどないとみられる。

今回、年末年始に間に合うよう急いだ結果、元売りに補助を出す異例のかたちになった。ガソリンのほか、灯油や軽油などどこまでが対象なのかも判然としない。「政治的に即時的な成果を求めたとの印象は拭えない」(伊藤リサーチ・アンド・アドバイザリーの伊藤敏憲氏)。燃料を使う側の企業や家計に実際に恩恵が及ぶのかも不透明な部分も残る。

ガソリンスタンドの競争は激しい。経産省は賛同する元売りがあれば他社も追随するとみる。全社が足並みをそろえる保証はない。賛同する時期が前後するだけでも業者間で価格競争力に差が出る可能性がある。少なくとも現場で不要な混乱が生じないよう配慮が欠かせない。

急場しのぎで一時的にお金をばらまくやり方が「賢い支出」にほど遠いのは間違いない。化石燃料からの脱却を進める気候変動対策の大きな流れにもそぐわない。異例の補助金が公的な関与として妥当かどうか徹底した検証が求められる。

※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。

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