オミクロン、迫る「市中感染」 国内体制整備が急務

国内で新型コロナウイルスの変異型「オミクロン型」が広がる可能性が高まっている。水際対策を強化しても潜伏期間もあるため侵入を完全に防ぐことはできない。オミクロン型の拡大スピードは速い。「市中感染」の増大に備えて検査・医療体制の整備を急ぐ必要がある。
そもそも市中感染とは何か。厚生労働省の説明はわかりにくい部分がある。
東京都内在住の20代女性は8日に米テキサス州から帰国後、14日間の自宅待機中に発症した。成田空港の検疫では陰性だった。16日にオミクロン型とわかった。入国時に陰性で、濃厚接触者でない健康観察の対象者の感染確認は初めてだった。
女性は帰国便の同乗者に陽性者がおらず、自宅で待機できた。同州が検疫所の確保する宿泊施設で3日間の待機を求める地域に指定される前のことだった。この女性と8、9日に会っていた都内の20代男性の感染が15日に確認された。都は「オミクロン型の可能性が高い」とみている。
厚労省は、仮にオミクロン型と判明しても「市中感染ではない」と説明する。水際対策の延長線上で把握できたとの理由からだ。
男性は女性と会った翌10日に発熱などの症状が出た。陽性と判明する前の12日には川崎市内でサッカーを観戦していた。都などはスタジアムで周囲にいた約80人のほか、職場の同僚らに連絡し、健康状態などの確認を急いでいる。
こうした接触者らの感染が確認されても、厚労省の見解によれば「市中感染ではない」ということになる。「感染経路が分かる」ためだ。
海外では通常、院内感染以外を「市中感染」として扱う。今回の男性や接触者がオミクロン型と判明すれば、事実上は市中感染の国内初確認となる。
オミクロン型は感染拡大のスピードがデルタ型を上回る。厚労省の助言組織の脇田隆字座長は16日夜の会合後、「市中感染を含め国内での拡大を想定して備えていく必要がある」と話した。
「市中感染」という言葉の定義にかかわらず、オミクロン型がすでに国内で広がっているリスクがより高まったことは確実だ。水際対策を過信せず、国内の検査体制のほか、感染拡大モードへの移行に時間を要する病院や宿泊療養施設などの体制整備が急務となっている。
(社会保障エディター 前村聡)

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