日韓首脳の会見要旨 岸田首相「訪韓、適切な時期に」
尹氏「求償権行使想定せず」

岸田文雄首相と韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領による16日の共同記者会見の要旨は次の通り。
【冒頭発言】
首相 長い冬の時期を抜けて2国間訪問としてはおよそ12年ぶりに韓国の大統領を日本に迎えた。現下の戦略環境の中で日韓関係の強化は急務であり、1965年の国交正常化以来の友好協力関係の基盤に基づき日韓関係をさらに発展させていくと一致した。
先般、韓国政府は旧朝鮮半島出身労働者問題に関する措置を発表した。非常に厳しい状態にあった日韓関係を健全な関係に戻すためのものと評価している。
日本政府は98年10月に発表した日韓共同宣言を含め歴史認識に関する歴代内閣の立場を全体として引き継いでいることを確認した。今後、措置の実施とともに両国間の政治、経済、文化などの分野における交流が力強く拡大していくことを期待する。
日韓関係の新たな章を開く。両国の首脳が形式にとらわれず頻繁に訪問する「シャトル外交」を再開させると一致した。多岐にわたる分野で政府間の意思疎通を活性化していくことで一致した。
具体的には長い期間中断していた日韓安全保障対話、日韓次官戦略対話を早期に再開し、ハイレベルの日韓中プロセスを早期に再起動する重要性で一致した。新たに日韓間で経済安全保障に関する協議を立ち上げる。
輸出管理分野でも進展があった。各政策分野で担当省庁間の対話を幅広く推進していく。
両国の経済団体が未来志向の日韓協力交流のための基金を創設すると表明したことを歓迎する。未来を担う若者の交流を引き続き支援する。
現下の厳しい安全保障環境について認識を共有した。16日朝の大陸間弾道ミサイル(ICBM)級弾道ミサイルの発射を含め核・ミサイル活動をさらに進める北朝鮮への対応について、日米同盟・米韓同盟の抑止力・対処力を一層強化し、日韓・日米韓の間でも安保協力を力強く推進していく重要性を確認した。
「自由で開かれたインド太平洋」を実現する重要性について確認し、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を守り抜くため、同志国が力を合わせていく必要性について認識を共有した。
尹大統領の訪日は日韓関係の正常化にとって大きな一歩となる。信頼と友情が育まれ日韓関係が大いに飛躍することを期待する。
尹氏 韓国と日本は自由、人権、法治といった普遍的価値を共有し、安保、経済、グローバルアジェンダで共同の利益を追求する最も近い隣人で、協力すべきパートナーだ。
韓日関係を速やかに回復して発展させていくことで志を同じくした。安保、経済、人的文化交流など多様な分野での協力を増進させる議論を加速する。経済安保と先端科学技術だけではなく金融、為替分野でも頭を寄せ合い共に悩んでいく。
外交、経済当局間の戦略対話をはじめ両国の共同利益について議論できる協議体を早急に復元することで合意した。今後、国家安全保障会議(NSC)の韓日経済安保対話の発足を含め多様な協議体が意思疎通していくことを期待する。
両首脳は韓国政府の強制徴用の解決策の発表を契機に、両国が未来志向的な発展方向を本格的に議論できる土台が設けられたと評価した。
北朝鮮の核・ミサイル開発が朝鮮半島と北東アジア、世界の平和を脅かすといったことで認識を共にした。韓米日・韓日の共助が重要で、今後も積極的に協力していくと一致した。
今年は98年に発表された金大中(キム・デジュン)大統領と小渕恵三首相の共同宣言から25年になる。今回の会談は宣言の精神を発展的に継承し、両国間の不幸な歴史を克服し、韓日間の協力の新しい時代を切り開く第一歩となった。
これから両首脳は形式にこだわらずシャトル外交を通じて積極的に意思疎通し協力していく。

【質疑】
――韓国の財団が日本企業に相当額の返還を求める求償権についてどう考えますか。シャトル外交の意義と時期もお聞きします。レーダー照射問題など積み残された課題もシャトル外交を通じて解決していきますか。
首相 シャトル外交の再開で一致した。今回はその第1弾と考えてよい。今後適切な時期の訪韓を検討する。具体的な時期は決まってはいない。求償権の行使は想定していないと承知している。
尹氏 もし求償権が行使される場合は再びすべての問題をスタート地点に戻してしまう。韓国政府は全く求償権の行使について想定していない。
――尹大統領は今回の結果で得られる国益についてどう考えますか。
尹氏 解決策の発表で両国関係が正常化され、発展すれば両国の安保危機への対応が力強くなる。首脳会談でも軍事情報包括保護協定(GSOMIA)の完全な正常化を宣言した。