原発建て替えを具体化へ 経産省方針、運転期間も延長
経済産業省は16日、エネルギーの安定供給に向けた具体策を取りまとめた。原子力発電所の建て替えや既存の原子炉の運転延長、再生可能エネルギーの大量導入時代を見すえた系統整備などを柱とした。年内に開く政府のGX(グリーン・トランスフォーメーション)実行会議に報告する。
総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)の基本政策分科会に提示し、大筋で了承された。西村康稔経産相は会議の冒頭で「化石エネルギーへの過度な依存の脱却をめざし、省エネ、再生エネ、原子力、系統整備の課題などに正面から取り組む」と強調した。

原子力をめぐっては、2021年にまとめた第6次エネルギー基本計画で「原発依存度の可能な限りの低減」としていた。今回は原発の新規建設や運転延長を含むが、経産省は「同計画の方針の範囲内だ」と説明した。分科会の委員からは「経産省の説明に強い違和感がある」との声が上がった。
原子力は廃止を決めた炉を建て替える方針で、関西電力の美浜原発(福井県)と日本原子力発電の敦賀原発(同)が候補とみられている。いずれも11年の東日本大震災の以前から事業者が増設の準備を進め、原発事故で凍結していた。運転期間は現行の原則40年、延長は1回までで20年を基本とし、新規制基準の審査対応などで停止した期間を追加できるようにする。
送電線の整備では、温暖化ガスの排出量実質ゼロをめざす50年に向けた送電線増強計画「マスタープラン」を22年度中に策定する。原案は再生エネの比率が50年時点で47~50%と想定し、日本の東西の周波数変換所を現行の210万キロワットから570万キロワットまで増強すると盛り込んだ。再生エネ資源が豊富な北海道と本州をつなぐ海底直流送電を新設する。
化石燃料とともに燃やして二酸化炭素(CO2)の発生を減らせる水素やアンモニアの普及に向け、既存の燃料との価格差分を支援する。需要拡大や産業集積を狙って拠点整備を促す。再生エネの導入が遅れる日本では国内での大量調達が難しく、経産省は海外からの輸入を想定する。化石燃料から転換しても、海外依存が続くことになる。
経産省は石炭よりCO2排出が少ない液化天然ガス(LNG)の供給確保に向け、事業者の間で融通する仕組みを構築した。エネルギー・金属鉱物資源機構(JOGMEC)に事業者に代わってLNGを調達するよう経産相が要請できる改正法も11月に成立した。
エネルギーの供給と消費の構造転換に向け、政府は20兆円規模のGX経済移行債(仮)を発行し、企業や消費者の脱炭素投資を支援する。28年度ごろに化石燃料の輸入事業者にカーボンプライシングの一種として炭素の量に応じた賦課金を導入し、GX債の償還にあてる。