岸田首相「歴史の教訓」に言及 戦没者追悼式の式辞で
岸田文雄首相は15日、77回目の「終戦の日」に際して政府主催の全国戦没者追悼式に出席した。式辞で「歴史の教訓を深く胸に刻み、世界の平和と繁栄に力を尽くしてきた」と語った。

安倍晋三元首相が2019年に言及して以来、3年ぶりに歴史の教訓に触れた。被爆地の広島県選出の首相として、歴史に謙虚に学ぼうとする姿勢を明確にした。
式辞の8割以上は菅義偉前首相による前年の内容を踏襲した。安倍氏が再登板して以降は言及しなくなったアジア諸国への加害責任にも触れなかった。
安倍氏の20年の追悼式は歴史の教訓に関する部分がなかった。2度目の首相就任以降「歴史と謙虚に向き合いながら」や「歴史を直視して常に謙抑を忘れない」といった表現を多く用いてきた。
菅氏は21年、歴史について「平和と繁栄は戦没者の皆さまの尊い命と、苦難の歴史の上に築かれた」と述べるにとどめた。
首相は「アジア諸国の人々に多大な損害と苦痛を与えた」など、12年末の安倍氏の首相再登板以降に消えた表現は今回も使わなかった。安倍氏は戦後70年の首相談話で先の大戦に関わりのない後の世代には謝罪を続ける宿命を背負わせてはならないと明言している。
こうした考えを踏まえたものとみられる。
23年5月に広島市で開く主要7カ国首脳会議(G7サミット)を控え、首相は世界に向けて核軍縮の発信を強めている。広島サミットを各国首脳が被爆地の現実を体感する機会に位置づける。自らも歴史と向き合う考えを示して新たな国際秩序を模索する。