訪日客回復、東南アジアけん引 2月はコロナ前比57%

日本政府観光局(JNTO)は15日、2月の訪日客数が147.5万人だったと発表した。新型コロナウイルス禍前の2019年2月比で57%の水準まで回復した。特に東南アジアのベトナムやインドネシアからの増加が目立った。欧米からも復調しており、3月初めの中国に対する水際対策の緩和を前に訪日客の裾野の広がりが見えた。
2月の訪日客数は1月からは2.2万人減った。日数が少ないことや観光の閑散期だったことが影響しており、回復率では1月(56%)を上回った。1〜2月の合計では年間訪日客数が1973万人だった15年を上回るペースで推移しており、年間2000万人を超える可能性も高まってきた。
国・地域別では韓国が56.8万人と最多で、19年2月に比べ79%の水準に回復した。東南アではベトナムが5.5万人で同42%増、インドネシアが2.6万人で同9%増、シンガポールが2.7万人で同4%増とそれぞれコロナ前を上回った。コロナ前に最多だった中国は、水際対策が続いた影響で95%減の3.6万人だった。
米欧もコロナ前に近づいてきた。米国は8.6万人で19年2月の94%となり、カナダは1.9万人で80%、英国は1.5万人で66%となった。濃淡はあるが順調に回復しており、幅広い国・地域から日本を訪れている状況がうかがえる。

訪日客の増加で小売りやサービスの現場は活気を取り戻している。百貨店大手5社の2月の既存店売上高は、三越伊勢丹ホールディングス傘下の三越伊勢丹が22年2月比で32.3%増となるなど2〜3割台の増加となった。
タクシー大手の日本交通(東京・千代田)は訪日外国人の観光タクシーの利用が足元でコロナ前の半分ほどに戻ってきた。
原料高などで逆風下にある食品業界にとっても訪日客の恩恵は大きい。マルハニチロではホテルなど向けの業務用水産物や、外食向けの刺し身用国産天然魚の引き合いが強い。池見賢社長は「インバウンド(訪日外国人)の増加で外食需要が上向いている」と分析する。
政府は1日から中国からの渡航者への水際対策を緩和した。インバウンドのもう一段の回復に向けては中国客の動向が焦点になる。
ANAホールディングスは水際緩和を受けて中国路線の復便や増便を進める。現在は1週間あたりの運航便数がコロナ前の1割に満たないが、芝田浩二社長は「23年度はコロナ前の6割まで運航規模を戻したい」と話す。日本航空も羽田―上海(浦東)線などを段階的に増便する計画だ。
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