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建設統計で不適切集計 国交省、データを二重計上

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国土交通省が毎月公表する「建設工事受注動態統計」でデータを二重に計上していたことが15日分かった。調査票を建設業者から集める都道府県に対し、受注実績を実質的に書き換えるよう指示していた。2013年度以降、不適切な対応が続いていたとみられる。この間、ゆがんだ統計をもとに政策決定がなされてきた懸念がある。

国の統計では、18年末にも厚生労働省の「毎月勤労統計」で不適切な調査が発覚した。その後、政府は他の統計の総点検や再発防止の取り組みを進めてきた。それでも埋もれていた不手際が発覚したことで、行政の信頼回復は遠のきかねない。

今回、問題が発覚した統計は国の基幹統計の一つで建設業の毎月の受注実態を示す。全国の約1万2000社を抽出して調べており、20年度の総額は79兆5988億円だった。国内総生産(GDP)の算出などにも使われる。二重計上によってデータが上振れしていた可能性が高い。

国交省によると建設業者は毎月1カ月分の調査票を提出するのが原則だ。期限に間に合わない業者は前月分など過去の調査票をまとめて出すケースがあった。この際、国交省は過去データを合計し、1カ月分として記入するよう都道府県に要請した。説明会などを開いて具体的な手法を指示していた。

約1万2000社のうち1割程度は期限に間に合わずに提出していたという。

一方で13年度以降、60%程度の回収率を100%相当に換算するため、未提出のデータを推計値で埋める補正処理を導入した。その後に業者から遅れてデータが提出された場合、推計値との二重計上が生じた。

21年4月に推計方法を見直し、二重計上はなくなった。20年度分の統計は算出し直した。19年度以前は「調査票のデータが残っていないため再集計できない」という。

岸田文雄首相は15日午前の衆院予算委員会で、データ二重計上について「大変遺憾なことだ。統計の信頼回復のために、経緯を確認し、再発防止のためにどういった形でやるべきなのか至急検討し対応を考えたい」と話した。

首相は「20年度、21年度のGDPには直接影響していない」とも説いた。「21年度補正予算案の修正は必要ない。予算審議を進めることが政治の責任だ」と強調した。斉藤鉄夫国交相は「大変遺憾でおわびする」と陳謝した。

統計を提出者に無断で書き換える行為は統計法に違反するおそれもある。国交省は「処理は適切ではなかったが、違法には当たらないと認識している」と話している。

厚労省の毎月勤労統計の不適切調査を受け、総務省が政府統計の一斉点検を実施したが、今回の不適切な処理は明らかにならなかった。総務省は「事実関係を確認中」としている。

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