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企業の分配、人件費より配当に 設備投資にも慎重

解読 ミニ経済白書③

岸田文雄首相は「成長と分配の好循環」を政策目標の柱に据える。内閣府の報告書「日本経済2021-2022」(ミニ白書)は現状は好循環が生じていないと分析する。

日本経済はバブル崩壊後、1990年代後半の金融危機、2008年のリーマン・ショックや足元の新型コロナウイルス禍などほぼ10年周期で危機に襲われてきた。企業が安全志向を強め、賃上げや投資に踏み切りにくくなっている。

90年代以降の景気回復局面で日本企業は全体として売上高が伸び悩む一方、利益は拡大した。内閣府は「固定費削減が企業収益の改善に大きな役割を果たした」とみる。合理化は経済全体の観点から見ると「成長と分配の好循環を結果的に弱めていた可能性がある」。

企業が生み出した付加価値が働く人にどれだけ分配されたかを示す労働分配率をみると、90年代以降は70%前後で減少傾向で推移する。20年度に上昇したのは、コロナの影響で企業活動が停滞した一時的な影響だ。対照的に配当金の比率は00年代から上昇傾向が鮮明で、株主還元は進んでいることがわかる。

設備投資も停滞している。付加価値に対する比率は20年度に15%と、リーマン・ショック前の07年の水準をなお下回る。海外企業のM&A(合併・買収)を含めるとリーマン前を超える。企業が国内より成長の見込める海外にお金を振り向けていることが見てとれる。

賃金や配当、投資に回らない資金は積み上がっている。財務省の法人企業統計によると、日本企業(金融など除く)の利益剰余金(内部留保)は20年度末に484兆円と過去最高を更新した。手元にある現預金も259兆円に膨らんだ。

安全志向が人件費や設備投資を抑制し、低成長につながる。内閣府は「負の循環に陥っている可能性がある」と指摘する。

成長と分配の好循環を生むには、賃上げ税制などで分配を促すだけでは足りない。企業がヒトやモノに積極的に投資し、経済が拡大しなければ、分配の原資は増えない。規制改革などで成長投資を後押しする取り組みが求められる。

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