/

建設統計、不正報告も上司「却下」 データ軽視根強く

(更新)

国土交通省の統計不正に関する第三者検証委員会は14日、幹部職員に「責任追及を回避したい意識があった」などと指摘する報告書をまとめた。不適切な手法を見直す提案に上司が取り合わなかったことも分かった。政策の根幹となる統計を軽視する風潮が根強いままでは、データがますます重要になるデジタル時代の競争に日本が取り残されかねない。

報告書によると、国交省は現行の「建設工事受注動態統計」の始まった2000年から、都道府県にデータの書き換えを指示していた。13年に推計法を変更した後には受注額の二重計上も生じていたが、歴代の担当者は「疑問を抱かなかったことがうかがわれる」という。政権のために数字を大きくするといった「作為的な意図」は確認できなかった。

一部の職員が声を上げてもやり過ごしてきた国交省の対応も明らかになった。18年10月には担当係長が着任したばかりの幹部に集計で書き換えをしている事実を説明したが「触れてはならないことに触れたという雰囲気」となり、放置された。

19年には新たに担当となった課長補佐が幹部に書き換えをやめるべきだと訴えたが、幹部はこの問題を「公表はしない」と発言したという。問題発覚後も「表ざたにならない形で収束させようとしたと認められる」と断じた。

短期の人事異動が前提で「任期を『やりすごす』インセンティブ」があったとみる。問題が分かっても自らで解決せずに先送りする組織構造があった。

検証委の寺脇一峰委員長(元大阪高検検事長)は「問題点が分かってもずるずる対応した。見る人によっては隠蔽工作と評価されても仕方ない」と話した。

検証委の調査を受ける過程で受注動態統計の新たな推計ミスも判明した。国交省は14日、13年4月分から21年3月分まで本来の金額より低く見積もっていたと明らかにした。大手以外の受注額を算出する際に、本来は含めるべきでない大手の事業者数を加えていた。都道府県に書き換えをやめるよう指示した20年1月以降も、一部の都道府県で書き換えが続いていたことも発表した。

岸田文雄首相は斉藤鉄夫国交相に再発防止に取り組むよう指示したが、信頼回復の道のりは険しい。過去の統計不正で提起された再発防止策も生かされず、かけ声倒れだった実態も改めて露呈した。

今回の検証委による再発防止の提言も多くは過去の統計改革で指摘された点と重なる。厚生労働省の毎月勤労統計の不正をうけて政府が19年にまとめた改革ではデジタル化の推進、統計の信頼性を高めるような職場風土の確立、統計専門家の育成などが柱だった。

しかしデジタル化はなお停滞したままだ。政府の基幹統計調査のうちオンライン回答率が50%に届かないのが20年末時点で34調査と全体の7割に上った。受注動態統計も11.2%と低い。みずほリサーチ&テクノロジーズの酒井才介氏は「デジタル化が進めばデータのチェックも容易になる。書き換えなどができないようけん制機能を持たせる意味でも早急に取り組むべきだ」と話す。

人材の不足も目立つ。基幹統計の3割にあたる16の統計調査では集計や分析を担う職員が3人以下だった。寺脇委員長は「統計部門の人的・物的資源は十分でない」と強調し、政府全体で統計実務を見直す必要があると訴えた。

経済活動でデータの重要性が増す中で基幹となるはずの政府統計の信頼が揺らげば、政策展開や企業の戦略にも影響が及ぶ。国交省だけでなく政府全体の問題として統計改革につなげられるかが問われている。

初割ですべての記事が読み放題
今なら2カ月無料!

セレクション

トレンドウオッチ

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

新着

注目

ビジネス

ライフスタイル

フォローする
有料会員の方のみご利用になれます。気になる連載・コラム・キーワードをフォローすると、「Myニュース」でまとめよみができます。
新規会員登録ログイン
記事を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した記事はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン
Think! の投稿を読む
記事と併せて、エキスパート(専門家)のひとこと解説や分析を読むことができます。会員の方のみご利用になれます。
新規会員登録 (無料)ログイン
図表を保存する
有料会員の方のみご利用になれます。保存した図表はスマホやタブレットでもご覧いただけます。
新規会員登録ログイン