SNSデータ保護規制、骨抜き懸念 総務省案に経済界反発
総務省は14日、SNS(交流サイト)などIT(情報技術)大手の規制強化の報告書案をまとめた。データの取り扱い方法の届け出や公表を求める。利用者情報を保管するサーバーの設置国の公表義務づけなど当初想定した案は経済界の反発を受けて先送りする。規制が実効性を欠き、利用者保護が後退すると懸念する声も出ている。

規制の強化は対話アプリ「LINE」の個人情報の管理問題を受けて検討を進めてきた。ネットの閲覧履歴などを企業が第三者の広告会社などに外部提供する場合の新ルールでは同意の取得や利用者が拒否できる仕組みの導入のほか、データを外部提供する通知や公表だけでも可能とする。17日召集予定の通常国会に改正法案を提出する構えだ。
デジタルサービスの拡大を踏まえ、多くの利用者を抱える検索サービスやSNS大手に電気通信事業法の網をかけるのが法改正を検討する狙いだった。LINE、グーグル、米メタ(旧フェイスブック)、携帯大手3社(NTTドコモ、ソフトバンク、KDDI)などを想定していた。
報告書案は対象範囲について「大規模な」との表現にとどめた。利用者数などの具体的な線引きの条件は、さらに議論を続けて詰める。事務負担や過剰規制の悪影響を懸念する産業界の指摘を受け、中小・スタートアップやクラウド事業者は除外した。
14日の有識者会議では、総務省が示した規制案に落胆の声が相次いだ。出席者からは「意味のない規制とならないよう実効性のある形で議論を進めてほしい」「規制が骨抜きになってしまう恐れがある」などの意見が出た。
規制内容は当初案から大幅に後退した。利用者情報を保管するサーバーを設置する国名の公表義務づけは事実上、先送りする。今後は単一国に限らない公表方法なども含めて再び議論する。
ネットの閲覧履歴では、当初は同意の取得か利用者が拒否できる仕組みを義務付ける予定だったが、報告書案で内容が弱まった。新しい規制の対象範囲も「通信の秘密」に関する部分などに狭まった。
こうした修正点については、改正法案を通常国会に提出するのと並行して検討を続ける方針だ。有識者と事業者の双方から異なる意見が出ている。総務省は調整力不足を露呈し、着地点は見通せていない。
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