日銀総裁に植田氏、政府提示 副総裁に氷見野・内田氏

政府は14日、日銀の黒田東彦総裁の後任に経済学者で元日銀審議委員の植田和男氏を起用する人事案を国会に提示した。副総裁に氷見野良三前金融庁長官、内田真一日銀理事を充てる案も示した。衆参両院の同意を経て内閣が任命する。
国会内で開いた衆参両院の議院運営委員会の理事会で同時に伝えた。
衆参両院の議運委での各候補の所信聴取、質疑を経て、両院の本会議で採決する。過半数の賛成で承認されれば内閣が正式に任命する予定だ。
3月半ばまでの同意を目指す。黒田氏は4月8日、副総裁の雨宮正佳、若田部昌澄両氏は3月19日に任期が満了する。黒田氏は2013年に総裁に就いた。18年に再任されて合計で歴代最長となるおよそ10年間の任期を務めている。
総裁に植田氏が就けば初の経済学者出身となる。民間からの起用は三菱銀行で勤務し1960年代に就いた宇佐美洵氏以来で、日銀と財務省(旧大蔵省)の出身者が続いていた。
植田氏は米マサチューセッツ工科大で経済学の博士課程を修了し、東大教授に就任した。国際派として主要国の中央銀行や市場参加者との円滑な対話に期待する声がある。
世界では米連邦準備理事会(FRB)のイエレン前議長やバーナンキ元議長など学者出身の中銀トップは珍しくない。
植田氏は98年から2005年まで日銀の審議委員を務め、デフレ下に入っていく局面でゼロ金利政策の導入にかかわった。2000年の金融政策決定会合では同政策の解除に反対票を投じた。
いまも持続的で安定したインフレ率にいたったと判断できるまでは性急な金融引き締めに慎重な姿勢だとの見方がある。23年2月10日には都内で記者団に「現在の日銀の政策は適切だ。現状では金融緩和の継続が必要だ」と述べた。
氷見野氏は旧大蔵省の出身だ。2000年の金融庁発足後は同庁の監督局や総務企画局を歩んだ。国際金融規制を担うバーゼル銀行監督委員会や主要国の金融当局でつくる金融安定理事会でも勤務した。
内田氏は金融政策を立案する日銀の企画局に長く在籍した。12年には企画局長に当時最年少で抜てきされた。黒田氏が導入したマイナス金利政策や長短金利操作(イールドカーブ・コントロール)導入に携わった。
黒田氏が就任直後の13年に始めた異次元緩和の検証と対応が注目される。現行の長短金利操作を見直すことの是非が当面の焦点になる。新総裁は経済や物価の情勢を見極めながら政策の変更を探るとみられる。
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