携帯電話の障害回避へ新ルール 総務省、事前規制強化

携帯電話の通信障害が相次ぐ事態を受け、総務省は障害を未然に防ぐためのルールづくりに乗り出す。通信設備のリスク管理やガバナンス(企業統治)の体制が整っているか、平時のチェックを導入する方針だ。携帯電話が暮らしやビジネスに欠かせない社会インフラへと育ち、通信の安全を保つ必要が増したと判断し事前規制を強める。
総務省の電気通信事故検証会議が14日、通信障害の構造的な問題と対策をまとめた報告書の原案を公表。事前規制を強める方針を示した。

報告書は障害が多発する背景として、人為的ミスやリスク評価の洗い出し不足、想定復旧時間の見積もりの甘さなど、管理体制の問題を指摘した。業界共通の課題として①ガバナンスの不足②外部監査の不足③リスクの洗い出しが不十分④人為的ミスの防止策が不十分――と列挙した。
総務省はKDDIの通信障害を受けた2022年の報告書で「人為的ミスを防止するための品質管理体制の強化を行うべきだ」と強調。トラブルが発生したときに音声交換機や利用者情報のデータベースにアクセスが集中し、異常な動作が起こる可能性を想定していなかったため、連鎖的なトラブルを招いた恐れを指摘。「異常状態における動作を検証・確認し、リスク管理を徹底する」などの対策を求めていた。
総務省は今回まとめる新たな報告書をふまえ、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルなど大手7社を対象に、平時の定期的なチェックに入る制度を導入する方針だ。設備の管理方針が守られているか、ヒト・モノ・カネの体制が十分かなどを重点的に調べる。
通信事故検証会議は23年春をめどに最終報告をまとめる。総務省は電気通信事業法の関連省令の改正などを進める。障害が起きてから報告を求めたり行政指導したりする「事後型」の規制を中心とするスタイルから、事前規制を重視する通信行政の転換となる。
電力やガスといったインフラでは事業者による自主検査に加え、政府による定期的な審査がある。欧米では通信分野でもすでに事前規制が取り入れられている。

日本では最近、大規模な通信障害が相次ぎ社会問題になっている。2022年7月のKDDIの障害は2日半にわたり全国の約3091万人が影響を受けた。8月にはKDDI、NTT西日本、9月には楽天モバイルとソフトバンク、12月にはNTTドコモが障害を起こした。