国交省不正、統計過大計上は最大年5兆円 秋までに修正 - 日本経済新聞
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国交省不正、統計過大計上は最大年5兆円 秋までに修正

国土交通省は13日、不正処理のあった「建設工事受注動態統計」のデータ修正に関する報告書をまとめた。二重計上が発覚した2013年度以降の過大計上は最大で年5兆円規模になる可能性がある。国内総生産(GDP)への影響は軽微とみられるが、政府統計の信頼は揺らぐ。国交省は今秋までにデータを修正し、再発防止策もまとめる。

建設工事受注動態統計は国の基幹統計のひとつで、GDPの算出に間接的に使う。全国の建設業者が請け負った毎月の受注額を調査する。国交省は2000年から調査票を集める都道府県にデータの合算処理を指示し、13年に推計手法を変更した後も不正を続けていた。本来はその月分の受注額のみを集計すべきところを、その前月や過去数カ月分の受注額も合わせて処理していた。

データ修正に関する検討会議(座長・青山学院大学の美添泰人名誉教授)はデータ修正に向けた新たな推計手法を採用し、詳細なデータがそろっている20年度の統計をまず試算した。20年度の不正は当月分とその前月分の受注額を合算しており、当月分だけで正しく計算した場合の年間受注額(下請け受注額含む)は76.8兆円と試算された。実際の公表数値との差は2.8兆円(3.6%)となった。

一方、13年4月~19年11月の統計については当月分と前月分に加え、さらにそれ以前の月分も合算していたため差額は大きくなる。20年度をこれと同様に過大な方法で算出すると、20年度の公表値との差は5.1兆円となった。このため、過去にさかのぼってこれからデータを復元した場合、19年度以前は統計不正の影響額が最大で年5兆円を超える可能性もある。

検討会議では建設工事受注動態統計から算出され、GDPに反映される「建設総合統計」への影響についても、13~20年度分はマイナス0.3%~プラス0.6%と試算した。GDPに占める建設分野の割合は約1割で、美添座長は「個人の所感だがGDPへの影響は軽微」と説明した。

国交省は今秋までに、過去の統計データを可能な限り整えた上で、新たな推計手法をもとに建設工事受注動態統計と建設総合統計のデータを修正する。13日に報告書を受け取った斉藤鉄夫国交相は「信頼回復に向けて先頭に立っていきたい」と述べた。

政府統計への国民の信頼は揺らいでいる。18年には厚生労働省の毎月勤労統計で不正が発覚した。政府は19年に基幹統計を一斉点検し、23の統計で集計の遅れや数値ミスなどが見つかった。今回の国交省の不正は見逃されていた。

政府は各省庁の統計の表記ルールを統一するなど対策を急ぐ。デジタル活用や再発防止の徹底は喫緊の課題となる。

ニッセイ基礎研究所の斎藤太郎経済調査部長は「統計の不祥事が多すぎる。公共財である統計を扱う人材が不足し、省庁ごとの差も大きい。同様のことが今後も起きないか心配だ」と話す。

国交省はデータ修正と並行して再発防止の検討会議も設置した。統計部門の人員増強や専門家をアドバイザーに起用するといった対策に着手している。このほか、職員による統計研修の受講徹底や組織風土改革に向けたグループディスカッションの定期開催なども早期に実施する。

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