岸田首相の「日経リスキリングサミット」での発言要旨
岸田文雄首相は12日、働く人の学び直し(リスキリング)の重要性を考える「日経リスキリングサミット」(日本経済新聞社・日経BP主催)に出席した。ビデオメッセージと座談会での発言要旨は以下の通り。
ビデオメッセージ
私はグリーンやデジタルなどの非連続的なイノベーションで社会課題を解決し、それを成長のエンジンとする新しい資本主義の実現を目指している。その原動力となるのは間違いなく人だ。

「新しい資本主義」の第1の柱として、人への投資のための政策を進めてきた。非連続なイノベーションの実現、長年にわたり大きな賃上げが実現しないという構造的な課題に対応するためにはリスキリングがカギとなる。
私はこの確信を持って現在開会中の臨時国会の所信表明演説でリスキリングを取り上げた。賃上げが高いスキルの人材を引き付け、企業の生産性向上につながり、さらなる賃上げを生むという好循環を機能させていく。
そのためにはリスキリングと労働移動の円滑化を両輪で進めていかなければならない。このため現行の3年4000億円の人への投資の政策パッケージを大幅に拡充し、5年で1兆円としてリスキリングへの公的支援を強力に進める。
国の取り組みだけではこの構造的な課題は解決できない。ぜひ民間企業においても人への投資を企業経営の中核に据え、リスキリングへの取り組みを進めていただきたい。国も全力で支援に取り組む。
座談会
――首相自身、リスキリングの経験はあるか。
「大学卒業後、銀行に勤めていた。その後、衆院議員になり今日に至るまでいろんな形で学び直しをやってきたが、いわゆる『OJT(職場内訓練)』だった。リスキリングとはちょっと違ったのではないかと思う」

「今大きな時代の変化の中で新しいもの、リスキリングが求められている。私も『新しい資本主義』という経済モデルを掲げ『人への投資』の重要性を訴えている」
――岸田政権のリスキリングへの考え方は。
「経済の枠組みで考えるといま日本だけでなく世界中の国でグリーン、デジタルといった社会的な課題を成長のエンジンにすることで持続可能な経済をつくっていこうという議論が進んでいる。グリーンやデジタルという分野は非連続的なイノベーションが次々と起こる世界だ」
「賃上げが高いスキルの人材をひきつけ、これが企業の生産性向上、イノベーションにつながり、さらなる賃上げを生むという好循環を機能させていく。こうした時代変化の中でリスキリングの重要性がより強調されている。官民協力して具体的な努力を続けていかなければいけない」」
――リスキリング分野で検討している政策は。
「人への投資と労働移動の円滑化、そして所得の増加という3つの課題の一体的改革を進める。すなわちこれからは人への投資と企業間の労働移動の円滑化を同時に進めることで、リスキリングした人材が賃金の高いところややりがいを持てる場所で活躍し、企業の生産性を向上させ、さらなる賃上げを生むという好循環をつくることが重要だ」
「そのため人への投資を5年間で1兆円に拡充し、今月中にとりまとめる総合経済対策で3つ大きな政策拡充をしていく」
②在職者のキャリアアップのための転職支援に向け、民間専門家に相談してリスキリング・転職までを一気通貫で支援する制度を新設する。
③労働者の訓練などを支援する企業への支援金の補助率引き上げなど、企業による在職者のリスキリング支援を強化する。
「23年6月までに労働移動円滑化に向けた指針を政府として取りまとめる。例えば年功賃金から日本にあった形の職務給への移行など大きな方向性も示す」
「今回の総合経済対策ではこうしたリスキリング支援と成長分野への官民投資の促進をセットで示すことが重要だ。熊本に誘致した台湾積体電路製造(TSMC)の半導体工場は7千人を超える雇用を生み、月給も全国平均を5千円以上、上回るといわれている。こうした好循環を生み出すことで構造的な賃上げを日本で実現する道を開いていければと今の政権では思っている」
―― これまでの日本の労働政策は失業対策、セーフティーネットに重点が置かれていた。失業なき労働移動をめざしているのか。
「セーフティーネットについては、政府として維持していくことが大事だと思っている。前向きな意味でキャリアアップ、新しい働き場所をめざす、そういった方々を応援する環境を整備する」
「経済全体がかつての日本と違って、大きなイノベーションを前にして労働移動が求められている。前向きな人の労働移動を応援する姿勢は大事なのではないか」
――最後に一言。
「新しい資本主義という経済モデルを考えるなかで人への投資を訴え、リスキリングを進めてきていることが時代からずれていないと確信する手掛かりになった。政府としても様々な環境整備をしなければならない」
「官民を挙げて思いをひとつにして協力していければと考えている。皆さまにもこの取り組みを理解してもらい、内容を濃くしていくためにご協力をいただきたいと思う」
働く人が業務に役立つスキルや知識を学び直すリスキリングが盛んです。職を離れて大学に入り直すリカレント教育も注目されています。DX推進の肝となるデジタル人材育成に関する最新のニュースです。
リスキリングとは