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処理水審査が実質終了 23年春の放出開始へ猶予なく

東京電力福島第1原子力発電所の処理水放出設備をめぐり、原子力規制委員会の審査が15日の会合でほぼ終了した。早ければ6月にも正式に合格となる。工期を考慮にいれると、東電が想定する2023年春ごろの海洋放出まで猶予はない。原発敷地内には処理水をためたタンクが1061基もならび、廃炉作業の障害になりつつある。処理水の安全な処分は福島復興に避けて通れない課題だ。

処理水は原子炉建屋などを通過して汚染した雨水などを敷地内の装置で浄化したものだ。トリチウム濃度を世界保健機関(WHO)が定める飲料水基準の7分の1程度にまで処理し、原発の敷地内から海底トンネルを通して放出する。東電は原発の沖合1キロメートルほどの海洋へ放出する計画を規制委に提出していた。

15日の審査会合では海洋放出に伴う環境影響の評価について議論した。規制委の伴信彦委員は東電に対して「放出が始まれば放射性物質濃度の測定データが増える。現時点の評価データと比べて変化があるか確認してほしい」と要望した。

今後、東電は実施計画を補正し、規制委は5月にも、事実上の合格証である審査書案をとりまとめる。東電は地元自治体の了解を得た上で海水ポンプや海底トンネルといった必要な設備の工事を始める。

ただ東電が想定する23年春の放出まで順調に進むかは不透明だ。まず全国漁業協同組合連合会(全漁連)や福島県漁業協同組合連合会(福島県漁連)などが海洋放出に反対している。処理水放出に伴う風評被害や工事のミスなどを懸念しているからだ。地元関係者は「東電は信用できない。国が前面に立って説明してほしい」と話す。

萩生田光一経済産業相は5日、の岸宏会長との面会で、「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」と話した。理解を得るまでは放出を留保する考えを示した。漁連の理解が最初の難関となる。

経産省は300億円を計上し、風評被害で売り上げが落ち込んだ場合に全国の漁業者を支援する基金をつくる。経産相はこれに加えて新たな後継者支援策などの検討をはじめる考えを示している。

東電は12日、海洋放出に伴う工事や環境モニタリングなどの費用が今後3年間で400億円にのぼることを明らかにした。福島第1原発事故に伴う除染や賠償、廃炉にかかる費用は膨らみ続け、電気代や税金が充てられている。

福島第1原発の敷地内では既に大量の廃棄物が保管されている。海洋放出が停滞すれば、処理水を貯留するタンクを増設せざるをえなくなり、廃炉の支障になる。政府と東電にとっては失敗が許されない作業になる。

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