日本、フィリピンにインフラ整備6000億円支援
首脳会談 日本の安保無償支援「歓迎」

岸田文雄首相は9日、首相官邸で来日中のフィリピンのマルコス大統領と会談した。2024年3月までに官民でフィリピンのインフラ整備などへ6000億円の支援をすると表明した。
共同声明でマルコス氏は日本が新たに設けた友好国の軍に無償支援する制度を歓迎した。
22年6月末に就任した同氏の来日は初めて。広域強盗事件の指示役「ルフィ」を含むとみられる日本人4人の強制送還は会談当日の9日までに実現した。首相は会談でフィリピン政府の協力に謝意を述べた。
両首脳は9日、安全保障協力の拡充に向けた共同声明を発表した。自衛隊と同国軍による人道支援や災害救援の部隊訓練を拡大する。
今は訓練のたびに自衛隊がフィリピンに滞在する際の法的地位などを巡る取り決めが必要だが、こうした手続きをなくす。
共同声明にはマルコス氏が「安保協力を深化させることを目的とした被供与国の軍などが裨益(ひえき)する新たな協力の枠組み立ち上げを歓迎」と記した。
日本が国家安保戦略などに基づいて新設する軍用資機材の無償供与の仕組みを念頭に置く。
共同声明を踏まえ政府はフィリピンに何を供与できるか調整する。実現すれば新制度の初適用になる。日本はフィリピンに警戒管制レーダーを輸出した実績がある。無償供与の枠組みも設けて部隊支援を強める。

東・南シナ海で威圧的な行動をとる中国に対処するため両国は関係を強化してきた。22年4月に都内で初の外務・防衛担当閣僚会合(2プラス2)を開いた。共同訓練しやすくする「円滑化協定」と部隊間で燃料などを融通し合う「物品役務相互提供協定(ACSA)」の締結に向けた検討開始で合意した。
日本が東南アジアでこれらの協定を結んでいる国はない。実現すれば日本が「準同盟国」と位置づける英国やオーストラリアに次ぐ安保協力の水準となる。
台湾有事をにらみ米国もフィリピンとの安保協力を重視している。米フィリピン両政府は2月、フィリピン国内で米軍が使用できる拠点を増やすと決めた。