成長へ「早期に経済対策」 第2次岸田内閣が発足
18歳以下の10万円相当給付、所得制限で自公合意
第2次岸田内閣が10日、皇居での首相親任式と閣僚認証式を経て発足した。外相に林芳正元文部科学相を起用し、ほかの閣僚は第1次内閣から再任した。歳出規模30兆円超を見込む経済対策を19日に決める。衆院選で政権基盤を固めた岸田文雄首相が持続的な成長への道筋を示せるのか、政策の実効性が問われる。
首相は10日召集の特別国会で第101代首相に選出された。同日夜に首相官邸で記者会見し、経済対策を裏付ける2021年度補正予算案を巡り「年内のできるだけ早期に成立させ、国民に一刻も早く届ける」と述べた。
新型コロナウイルス対応、経済政策、外交・安全保障を列挙して「スピード感を政策実行に発揮すべく全力を挙げる」と強調した。「成長のための投資と改革を大胆に進める」とも宣言した。
18歳以下の子どもを対象にした給付を表明した。非正規雇用など経済的な困窮世帯やコロナ禍で苦しむ学生には10万円を支給する方針を示した。事業者には持続化給付金並みの支援を11月から22年3月までの5カ月分まとめて給付する。
「人への投資を抜本的に強化するための3年間の政策パッケージを設ける」と掲げた。働き手のデジタルなどのスキル習得を後押しする。

賃上げした企業への優遇税制の拡充を打ち出した。月内に開く新しい資本主義実現会議で22年の春季労使交渉に向けた賃上げ議論を始める。「労使の代表と向き合い賃上げを促す」とも話した。
21年度補正予算案は12月に開く臨時国会での成立を想定する。一般会計の追加歳出は30兆円を超える見通しだ。年内に22年度予算案も編成する。
自民、公明両党は10日、18歳以下への10万円相当の給付に所得制限を設けると合意した。主に収入を得ている人が年収960万円未満の世帯に限る。先行して現金5万円、来春をめどに5万円を原則クーポンで配る。
対象世帯の多くで申請手続きが要らない「プッシュ型」で給付する。児童手当の仕組みを使って所得を把握し、登録した口座に振り込む。
マイナンバーカードの保有者に最大2万円分を付与するポイント制度も始める。カードの新規作成で5000円分を上限にキャッシュレス決済のうち一定割合を還元する。健康保険証としての利用、銀行口座とのひもづけで各7500円分を付ける。
給付などの刺激策は効果が一時的だとの見方がある。単なるバラマキで終わらせないためにも、コロナ禍のあとを見据えた中長期的な成長への具体策が欠かせない。
10月4日に誕生した第1次内閣は事実上の選挙管理内閣だった。衆院選で自民党は単独で絶対安定多数を確保した。
外相の林氏は岸田派に所属する。第1次内閣で外相だった茂木敏充氏は衆院選後に自民党幹事長に転じ、首相が11月4日から兼務していた。首相補佐官は新設の国際人権問題担当を中谷元・元防衛相が担う。女性活躍担当は森雅子元法相が務める。
自民、公明両党は1日に連立政権を継続する合意を結んだ。「選挙戦を通じて寄せられた民意を深く胸に刻み、コロナ禍から国民の命と健康、雇用と暮らしを守るとともに一日も早い日本の再生に向け全力で取り組む」と記した。
首相が議長を務める「新しい資本主義実現会議」は8日にまとめた緊急提言で、成長と分配の両面で当面取り組む施策を掲げた。
9日には公的価格評価検討委員会を立ち上げた。看護や介護、保育などの従事者の賃上げを優先課題に据える。
新型コロナを巡っては12日に「第6波」に備える対策の全体像を公表する。無料でPCR検査を受けられる環境を整える。コロナ治療の飲み薬は年内の実用化をめざす。
与党は10月の衆院選で勝ったものの、小選挙区での接戦が目立った。22年夏には参院選が控える。32の1人区が勝敗を左右する。
新型コロナの感染が再拡大したり、経済の回復が鈍ければ、接戦区で野党に勢いが出る可能性もある。首相は経済対策やコロナへの対処で具体的な成果づくりを急ぐ。
首相は12年の第2次安倍政権の発足から4年7カ月にわたって外相だった。外交・安保にも力点を置く。
記者会見で早期の日米首脳会談の実現に触れた。「年内を含めできるだけ早く米国を訪問し、日米同盟のさらなる強化、『自由で開かれたインド太平洋』の実現に向け連携していく」と主張した。
国家安全保障戦略の改定に向け、国家安保会議で「徹底的に議論する」と述べた。ミサイル防衛能力の向上や宇宙やサイバーといった戦闘の新領域に言及し「防衛力の強化に取り組む」と訴えた。
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