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古い石炭火力、30年までに廃止か更新 新基準で規制強化

(更新)
企業ごとに発電効率43%という新たな基準を設ける(国内の石炭火力発電所)=共同

経済産業省は温暖化ガスの排出量の多い石炭火力発電所を国内で減らすため規制を強化する。新たな基準などで発電効率の高い発電所に絞り込む。低効率の古い石炭火力の多くが2030年にかけて休廃止や更新が必要になる。欧州を中心に全廃を掲げる国もあり、世界の流れとは溝がある。

非効率な石炭火力の縮小に向けては、梶山弘志経産相が20年7月に新たな仕組みの導入の検討を指示した。総合資源エネルギー調査会(経産相の諮問機関)で議論を進め、9日の会合で新たな規制の方針をとりまとめた。今後は関係する省令の見直しを進める。

経産省集計で基準クリアは19年度に2基

石炭火力は全国に150基ある。電力会社ごとに石炭火力の発電効率を43%にするよう新たな基準を設ける。

現状は石炭だけでなく液化天然ガス(LNG)や石油も含めた火力発電の全体としての指標で、44.3%だ。

石炭火力は最新鋭の設備でも発電量あたりの二酸化炭素(CO2)排出量がLNGの2倍以上ある。石炭に限った基準にし、他の火力の効率化では補えないようにするのがポイントだ。

電力会社で構成する電気事業連合会は「43%は非常に高い目標だ」として簡単ではないとの認識を示す。43%は石炭火力で最高水準にあたる。経産省の集計では大手電力の発電所のうち19年度時点で40%以上は31基で、43%以上は2基だったという。30年にかけて発電効率の実績が低い石炭火力の廃止や更新が相次ぐと想定される。

大手電力ではないが、宇部興産も山口県宇部市に2つの石炭火力を持つ。同社はいずれも発電効率43%はクリアしているとみている。経産省は基準を達成できなかったとしても罰則や強制的な措置は設けない方向だ。基準より低い場合に指導・助言で実効性を担保するという。

電力会社は対応を迫られる。全国7カ所に計14基の自前の石炭火力を持つJパワーは、総発電量のうち3割以上を非効率な石炭火力が占める。「高効率を促すシステムを導入するなどして達成へ尽力する」と話す。

日本は燃焼時にCO2を出さない水素や、アンモニアを石炭に混ぜて燃やす技術で世界に先行している。排出したCO2を回収、貯留する技術開発も急ぐ。石炭火力は日本全体のCO2排出量の約4分の1を占める。政府は50年の温暖化ガス排出量実質ゼロを掲げており、石炭火力の大幅な縮小が必要だと判断した。

ただ、19年度の国内の発電量のうち、石炭火力は32%を占め、37%のLNGに次いで2番目に多い。原子力発電所の再稼働がなかなか進まない中で、一定程度は必要とみて高効率のものは稼働を認める。

欧州では全廃の流れ、ESG投資家の視線厳しく


脱石炭火力は欧州が強く主張する。フランスは2022年、産炭国のドイツも38年と、年限を区切って石炭火力を全廃する方針を示している。
米国で気候変動問題を担当するケリー大統領特使は小泉進次郎環境相と電話での協議で、石炭火力の輸出への日本の公的支援に懸念を示してきた。バイデン政権は35年までに電力部門を脱炭素化する方針を掲げているが、石炭産業を抱える地域では反対論もある。
「資源のない我が国では一つ一つの電源を放棄できない」。梶山経産相は、欧州の全廃方針との違いを問われてたびたびこうした認識を示してきた。国境をまたいだ送電網とパイプラインが張り巡らされ、発電量が不足しそうなときに融通しやすい欧州と、島国で周辺と送電網がつながっていない日本は状況が違うとの指摘もある。
一方で石炭火力には海外投資家の目の厳しさが増す。ESG(環境・社会・企業統治)投資家の国際組織PRIなど3団体は3月、梶山経産相に対し建設前の石炭火力計画の中止などを求める公開書簡を送った。
50年までに投資先の排出量を実質ゼロにすることを目指す年金基金や保険会社など35社で構成する「ネットゼロ・アセットオーナー・アライアンス」も20年11月、既存の石炭火力の段階的廃止を求めると表明した。国内の大手金融機関も新設向けの融資は原則として実施しない方針を相次いで示している。
政府が15年に決めた30年度の電源構成では石炭で26%の発電を占める計画としていた。政府は太陽光や風力発電などの再生可能エネルギーの拡大を進めている。石炭火力を大幅に減らして脱炭素を進めつつ、必要な電力をいかに供給するかの現実解を探る必要がある。

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