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鉄鋼追加関税、完全撤廃ならず 米国が早期幕引き優先

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日米両政府は8日(米東部時間7日)、米国が日本から輸入する鉄鋼に課してきた追加関税を4月に一部免除すると発表した。年125万トンの無関税の輸入枠を設けることになり、アルミニウムは追加関税を据え置いた。鉄鋼、アルミともに日本が求めていた完全撤廃には至らなかった。米国が早期の幕引きを優先した形で、日本側には不満が残る。

年125万㌧の輸入枠、障壁は残る

熱延コイルなど54品目の合計で年125万トンまで25%の追加関税を免除する。そのぶんは上乗せ前の関税率のゼロ%に戻る。125万トンは日本からの鉄鋼輸入の2018~19年の平均だ。

追加関税や新型コロナウイルスの感染拡大で72万トンに減った20年を上回るものの、15年まで200万トンを超えていたことを考えると必ずしも十分とは言えない。

日本の鉄鋼業界の関係者は「現状から解決に一歩進んだのはプラスだ。日本政府には引き続き交渉してほしい」と語った。アルミは10%の追加関税が残った。もとのゼロ~6.5%の関税と合わせて最大16.5%が課される。米国で代替品を調達しにくい自動車向けなどのアルミ製品は対象から外せるが、手続きに時間と手間がかかる。

米国は欧州連合(EU)に対しては、1月から鉄鋼、アルミの双方に追加関税をかけない輸入枠を設けた。ただ経済産業省によると、EUの鉄鋼の枠は18~19年平均の輸入量の7~8割にとどまる。鉄鋼は日本のほうが条件が良く、鉄鋼を優先したことがうかがえる。米政府高官は「日本がアルミを合意に入れないことを選んだ」と説明した。

追加関税はトランプ前政権下の18年3月に導入した。通商拡大法232条に基づき、日本などの同盟国も安全保障上の脅威とみなして課税した。バイデン政権で解決に動いているが、日本もEUも完全撤廃ではなく輸入制限自体は残る。

背景には支持基盤の労働組合の強い意向がある。

全米鉄鋼労働組合(USW)は対日関税の一部免除を受けた声明で「米国産業の成功を続けられる(無関税の)輸入量を交渉で獲得できた」と述べ、米政権を評価した。11月の中間選挙を前に完全撤廃に踏み切れば、労働者や鉄鋼メーカーの離反は避けられない。

バイデン政権が中間選挙の直前の交渉妥結を避けたとの見方もある。対中国の包囲網の形成やロシアによるウクライナの再侵攻の抑止に同盟国との連携は急務となっている。EUや日本に続き、英国とも1月に追加関税の解決に向けた協議開始に合意した。

レモンド米商務長官は声明で、今回の取り決めについて「最も重要な同盟国の一つである日本との間の懸案に対処できる」と述べた。萩生田光一経産相は8日の記者会見で「完全撤廃を引き続き粘り強く働きかけていきたい」と協議を続ける意向を示しており、認識にずれがある。

(江渕智弘、ワシントン=鳳山太成)

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