プラチナバンド開放へ一歩 費用「原則、既存事業者」
総務省の有識者会議は8日、電波がつながりやすい「プラチナバンド」と呼ばれる周波数帯の再割り当てを巡り、移行にかかる期間や費用の条件案を示した。期間は「5年を超える設定可能が適当」、費用は「既存免許人の負担を原則」とした。初めて条件案が示されたことで携帯各社の競争促進へ一歩前進した。
プラチナバンドは700~900メガヘルツ(MHz)の周波数帯を指す。既にNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社が利用し、楽天は800~900MHz帯の再割り当てを要望している。
一度割り当てた周波数帯は事実上、同じ事業者に自動的に更新されてきた。競争促進や電波の有効利用の観点から、周波数の再割当制度を盛り込んだ改正電波法が10月1日に施行された。
8日の総務省有識者会議では、楽天のような新規参入者を念頭に再割り当てが認められた場合の移行期間と費用負担の考え方を示した。

報告書案では標準的な移行にかかる期間を「再割り当ての時点から5年間」とした。その上で、プラチナバンドの場合は電波が届きにくい場所に電波を中継する装置「レピータ」の交換などにかかる期間を勘案。「5年を超える設定ができることとするのが適当」とした。既存事業者が徐々に無線局を減らし撤退したエリアから、新規事業者が順次基地局を開設する段階的移行を想定する。
費用については原則、既存事業者の負担とした。新旧事業者が合意すれば新規事業者がレピータ交換の費用を負担することで工事を前倒しできることも適当とした。
楽天はプラチナバンドの再割り当てを巡り1年以内をめどに移行することを希望し、10年程度とするドコモやKDDIと食い違っていた。楽天は「1年以内の利用開始」とする基本姿勢は維持しつつ、2024年3月以降に一部地域で開始し、その後10年程度かけて全国に段階的に広げていく妥協案も提示した。
移行にかかる費用については既存3社が1社あたり750億~1150億円程度の費用が発生すると主張して楽天側に負担を求め、楽天は移行費用は既存事業者が負うべきと主張してきた。
今回の報告書案について楽天は「新規参入事業者の主張が費用負担の観点で概ね反映されたと考えている」とコメントした。移行を段階的にする案も楽天の希望と合致した。ただ利用開始時期や移行期間の詳細は現時点では不透明。楽天は今後も早期割り当ての要望を続けるとみられる。
楽天は再割り当ての申請の際、既存事業者より優れた電波利用計画を示し電波監理審議会(総務相の諮問機関)などの審査で認められる必要がある。基地局の数や人口カバー率、通信量など評価項目が多く、実現には多額の投資が必要になる可能性もあり新規事業者に有利とはいえない。
電波監理審議会は10月にプラチナバンドの電波が有効利用されているか評価を始めている。楽天はこの結果が出次第、申請する見通しだ。