萩生田経産相「脱炭素実現に原発欠かせない」
岸田政権・閣僚に聞くまとめ読み②

「原発、脱炭素実現に欠かせない」(萩生田光一経済産業相)
――脱炭素に向けて原子力発電を使っていきますか。

「脱炭素社会の実現に向けて、あらゆる選択肢を追求していくことが必要だ。安定かつ安価な電力供給や気候変動問題への対応などを考えれば、安全確保を大前提としたうえで、原子力を利用していくことは欠かすことができないと考えている」
「地元の理解を得ながら、安全最優先の再稼働を進めていくとともに、将来を見据えて安全性の向上に向けた研究開発や人材育成にしっかりと取り組んでいきたい」
――既存原発はいずれ寿命を迎えます。新増設・リプレースは検討しますか。
「現時点において原発の新増設やリプレースは想定していないのがこれまでの政府方針であり、その方針に変更はない」
――菅義偉前政権がまとめた次期エネルギー基本計画案の修正を考えていますか。
「10月末から始まるCOP26(第26回国連気候変動枠組み条約締約国会議)に間に合うように閣議決定をめざしたい」
「政府の大きな方針はすでに決定しているわけだから、『パブリックコメント(意見公募)によって(原発の)新設をすることになりました』という風に、基本計画が変わることはない。従来の大きな方針は変わらない」
――送電網の容量不足から太陽光発電などの出力制限が起きています。どう対応しますか。
「再生可能エネルギーの最大限の導入を進めるうえで、早期に対策を講じていく必要がある。出力制御の予測精度の向上や余剰分の電気を活用するため蓄電池などの活用が有効だと考える」
「(菅政権で)文部科学省にいるとき、経産省と一緒に蓄電池の開発に携わった。せっかく発電したものを蓄えることができない状況を変えないと、再生エネの政策は前に進まない。出力制御の低減に向けて、これらの対策について速やかに省内で検討を進めたい」
――下請けいじめの解消の必要性をどう考えますか。
「下請けGメンの調査や監督体制を一層強化していくとともに、岸田政権がめざす『下請けいじめゼロ』を実現するため、どのような措置を講じるべきか検討を続けたい。今まで取り組んできた法律に基づく規制強化や監視は大きな成果があったと思うが、レアケースを丁寧に想定しながら、下請けの皆さんが安心してもらえるような制度を強化していく必要がある。担当の皆さんとも話し合いを始めた」
「再生エネの最大限導入が脱炭素化の答え」(山口壮環境相)
――地球温暖化対策にどう取り組みますか。

「イノベーションがキーワードになる。日本企業は安い労働力を求めて中国や東南アジアに出て技術革新が起こりにくくなった。新しい世界の中で経済発展するしくみをつくらなければいけない」
「簡単ではない。民間企業だけではリスクを取れないので、国家戦略として後押しする必要がある。環境省は今までの状況を続けるためのサポートよりも、次の高みに持っていく企業を応援する。そのために産業界の意見や要望をしっかり聞きたい」
――炭素税や排出量取引など、カーボンプライシングについてはどういった手法が最適だと考えますか。
「年内に方向性を出すべく環境省と経済産業省がそれぞれ有識者検討会で議論している。炭素税やクレジット取引など複数の施策を混ぜたポリシーミックスでやることになるだろう。技術的、専門的な検討でターゲットが絞られてくる。環境と経済を両立させるのがイノベーションであれば、それに必要な資金の課題を解決するのがカーボンプライシングかもしれない」
――原子力発電の活用についてどう考えますか。
「政府として可能な限り、依存度を低減させる方針だ。私にはそれをできるだけ早くという意識もある。そのためには再生可能エネルギーの最大限導入が答えになる。研究開発中で安全性が高いと期待される新型原子炉は最初から否定するものではないが、原子力を可能な限り低減させる中で検討することだ」
――レジ袋有料化の施策を見直してほしいという声が上がっています。
「レジ袋が有料になって困っている人もいる。いろんな人の意見を聞いていく。行政は継続が重要で、急に有料化をやめることには慎重な立場だ。コンビニやスーパーマーケットでレジ袋の辞退率が高まっている。22年度にはプラスチック資源循環促進法の施行を控える。法の趣旨に照らして政策の一貫性を持たせることも重要だ」
「日本よりも中国や東南アジアの方がプラごみを出している。日本が世界の中で主要な役割を果たすために、やるべきことは率先してやっていく」
「米価下落への対応は最重要課題」(金子原二郎農相)
──今後、優先して取り組む課題は何でしょうか。

「喫緊の課題は新型コロナウイルス対策だ。これまで(外食需要喚起策の)『Go To イート』含め色々な対応をしてきたが、まだまだ十分でない。次の補正予算を含めて検討する」
──農地の規制改革を巡って、一般企業が農地を所有できる特例措置の全国展開を求める声があります。
「(企業が農地を保有して耕作する)農地所有適格法人は政府がまとめた方針に基づき、現場の意見を十分踏まえて具体案を検討したい。今後、調査を行う予定だが、特例措置の全国展開について予断をもって行うものではない。具体的な内容やスケジュールなどは今後検討する」
──岸田首相が掲げる「新自由主義的政策からの転換」をどう見ていますか。
「(農業では)生産者や地域の状況を踏まえて考えなければならない。農業はほかの産業のように利益を出して労働者に分配するのが難しい。総理の意向に沿い、どのような政策にするのか検討する」
──新型コロナの感染拡大に伴いコメの価格が下落しています。コメ農家の経営安定化にはどう取り組むつもりですか。
「首相からは生産者が厳しい状況におかれているため、早急に対応を検討するよう指示があった。在庫の保管経費などを支援する事業をこれからも拡充していきたい。(コメ需給対策は)最重要の問題として取り組んでいる。できるだけ早く対応策をみなさんに示したい」
──中国と台湾が相次ぎ環太平洋経済連携協定(TPP)への加盟を申請しました。
「日本としては、加入申請を提出した国・地域がTPPの高いレベルを完全に満たす用意ができているか、しっかりと見極める必要がある。関係省庁と連携をとりながら国益に沿った結果が得られるように対応していく」
「米国に対しては、TPPへの復帰が望ましいという考えをかねて伝えてきたと承知している。農水省として米国の貿易政策の動向についてはよく注視していきたい」