立憲民主党、維新と共闘優先 被害者救済法案が衆院通過

世界平和統一家庭連合(旧統一教会)問題を巡る被害者救済法案は8日、衆院を通過した。与党や立憲民主党、日本維新の会、国民民主党などが賛成した。政府・与党は国会閉会日の10日の成立を見込む。修正協議が決着した背景には閉会後を見据えた立民の思惑がにじむ。
新法案を巡っては、自民、公明、立民、維新、国民民主の与野党5会派が宗教団体などの法人が寄付を勧誘する際の「配慮義務」規定について修正案を共同提出した。

条文は配慮義務に「十分に配慮」するよう要求する強い表現に変えた。法人が配慮を怠った場合は、行政が勧告や名前などの公表をできるよう修正した。法施行後3年としていた見直し規定も2年に短縮した。
修正された法案は8日の参院本会議で趣旨説明と質疑まで終えた。9日の参院消費者問題特別委員会で実質審議入りする。
立民と維新は今国会の共闘項目の一つに旧統一教会の被害者救済への対応を掲げ、10月に法案を共同提出した。自民、公明両党とは4党の協議会を立ち上げて、政府が提出する法案の内容を与野党が事前に協議する異例の対応に臨んだ。
与野党協議で立民・維新の両党は足並みをそろえたものの、12月10日の会期末が近づくと主張に差も見えてきた。
立民内には「国会会期を延長してでも交渉を続けるべきだ」との意見だけでなく「救済には不十分で法案に賛成すべきでない」といった声もあった。維新側には与党による歩み寄りを評価し「会期を延長せずに成立させるべきだ」との指摘が大勢を占めた。

日本経済新聞社の世論調査で両党の政党支持率は10%前後で推移する。立民は共闘のほうが単独で取り組むよりも成果が得られるとみて、来年1月召集の通常国会でも維新との連携を見据える。両党で賛否の対応が割れないよう腐心した。
立民の岡田克也幹事長は6日に自民党の茂木敏充幹事長と会談し、新法案で配慮義務に「十分に配慮」するとの文言を盛り込むよう重ねて要請した。岡田氏は維新の藤田文武幹事長とも事前に調整した。
自民党が立民の主張を受け入れ法案の修正に動いたことで、岡田氏は7日の党会合で法案に賛成する方針でまとめた。
修正迫り「野党批判」を回避
立民、維新にはそれぞれ今国会中に法案が成立しなければ、野党に批判の矛先が向かうとの懸念もあった。立民は安倍晋三元首相が銃撃を受けた7月以降、旧統一教会の被害者や弁護団から聴取を重ねてきた。
安住淳国会対策委員長は8日の党会合で「土台や条文をつくり、政府が検討を始めるようにしたのは立民だ。議会の成果だ」と強調した。
被害対応に携わった弁護士らの間には新法案の実効性を疑問視する声が残る。衆院消費者問題特別委は8日、付帯決議を採択した。新法案が定める配慮義務の内容について具体例を示すことを政府に求めた。
立民の長妻昭政調会長は8日の記者会見で「不十分だが一歩前進だ。よりよい法律をつくるために与党の背中をさらに押していく」と述べた。