地域交通支援へ新制度 1月までに具体案、国交省が議論
地方の公共交通機関の再構築に向け、新たな支援制度に関する議論が本格的に始まった。国土交通省は7日に有識者会議を開き、2023年1月までに具体的な制度設計や法改正に向けた検討を進めることを明らかにした。新型コロナウイルス禍で存廃も含めた抜本的な見直しが迫られるなか、地方自治体や事業者の利害調整を国が主導する。

国交省は今夏に2つの有識者会議でまとめた提言をもとに、支援制度の詳細を詰める。鉄道やバス、タクシーといった各事業者がバラバラに手がけていた交通サービスを一体的に運営し、利便性の向上やエリア全体での利用拡大をめざす。
具体的には政府が複数年で運行経費を補助するほか、デジタル活用を後押しする仕組みづくりを想定する。ローカル鉄道には自治体と事業者の合意で運賃設定を可能にする「協議運賃」の導入なども検討する。7日の会議に出席した有識者からは「公共交通に加えて、福祉やまちづくりに関する予算も総動員すべきだ」との声が上がった。
20年に改正した地域公共交通活性化再生法は、自治体が「地域公共交通計画」を策定することを努力義務とした。新たな支援制度はこの仕組みの活用を想定し、自治体が複数の事業者と連携して実効性のある交通計画を運用することを求める。
地域交通の再構築が円滑に進むか、課題は残る。利用者の減少で再生を見込みにくい赤字路線は廃止も視野に入るが、自治体側に抵抗感は強い。現行制度はローカル鉄道に原則として運行経費の補助を出さない一方で、路線バスや離島フェリーには補助が出るなど交通機関への支援には違いがある。
7日の会議に出席した有識者の一人は「ローカル線をただ存続するか否かという議論をしていることは不毛だ」と語った。自治体と事業者の連携が不十分なままで、有効な対策を打てていなかった状況を厳しく批判した。
今後はこうした制度上の課題もふまえ、国側が利害調整に乗り出すことになる。赤字の穴埋めを前提に公的支援を拡大すれば、非難を浴びる可能性もあり、難しいかじ取りを迫られる。
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