夏の電力逼迫、政府が節電要請 休止火力の再稼働求める

政府は7日午前、首相官邸で電力需給の逼迫に備えるための関係閣僚らによる会合を開き、2022年度に取り組む総合対策を取りまとめた。足元の電力需給に関して「極めて厳しい状況」との見解を示し、家庭や企業に7月から9月にかけての節電を要請した。電力会社には休止中の火力発電所の再稼働や燃料の追加調達を求めた。
「電力需給に関する検討会合」を開くのは17年以来5年ぶり。全国規模の節電要請は7年ぶりとなる。松野博一官房長官は会合で「今年の夏は全国で生活や経済活動に支障がないよう一律の節電の数値目標は定めないが、できる限りの節電・省エネへのご協力をお願いしたい」と呼びかけた。
松野氏は「電力需給の安定に向けて全力で対応するとともに、国民に対して適切なタイミングでわかりやすい情報発信につとめる」とも強調した。
総合対策は足元の電力需給に関して「国民全体で一層の節電に取り組まなければ、22年度はさらなる電力需給逼迫に直面する恐れがある」と明記した。ロシアによるウクライナ侵攻などに伴うエネルギー価格の高騰に触れ「燃料の安定調達を確保できないリスクが高まっている」と言及した。

供給対策として火力発電などの休止中の電源の立ち上げに対価を支払う公募を実施する。燃料を追加で調達する事業者も募る。再生可能エネルギーをできるだけ稼働させつつ「安全性の確保された原子力を最大限活用する」と強調した。
需要対策としては節電要請に加え、産業界や自治体に対して逼迫時の対応策の内容、手順を整理するよう求めた。冬場はさらなる電力需給の逼迫を見込み、数値目標付きの節電協力を要請する必要性について検討するとも記した。
電気事業法に基づく使用制限令の発出に備えて「円滑な実施方法の検討」をするとも言及。計画停電にも触れて「円滑な発動に備え、一般送配電事業者による準備状況の確認」を実施すると説明した。
電力が足りなくなる可能性がある場合の情報発信も見直す。逼迫が予想される場合に出す注意報を新設する。前日に発出して注意喚起する。現在の警報に追加する形で導入する。
政府が電力不足に備えた危機感を産業界や家庭に発信するのは、電力の安定供給への懸念があるためだ。3月の福島県沖の地震で一部の火力発電所が損傷し、供給力が低下している。中部・東京・東北電力管内で7月の供給余力を示す予備率は3.1%の見込みだ。安定供給のために最低限必要とされる3%をかろうじて上回る水準だ。冬はさらに深刻で、23年1月には東京の予備率はマイナス0.6%、中部、関西などでいずれも1.3%となる見通しだ。
※掲載される投稿は投稿者個人の見解であり、日本経済新聞社の見解ではありません。
この投稿は現在非表示に設定されています
(更新)