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岸田外交、手探りの始動 米豪首脳と電話

岸田文雄首相は5日、バイデン米大統領と電話で協議し首脳外交に着手した。安全保障政策の基盤となる同盟国や友好国とこれまで通り緊密に連携すると確認した。首相は約4年7カ月の外相時代の経験を生かして外交に臨む方針だが、本格的なデビューは31日投開票の衆院選後になる。

首相就任後の初外交に選んだのはバイデン氏との電話での協議だった。日米同盟を強化して「自由で開かれたインド太平洋」の実現へ連携すると一致した。

バイデン氏は米国の対日防衛義務を定めた日米安保条約第5条に関して「沖縄県・尖閣諸島に適用する」と明言した。安倍晋三、菅義偉両政権時と同様の協力をすると固まった。

バイデン氏は外相時代にオバマ政権の副大統領として会った旧知の仲だ。5日の電話では「ジョー」「フミオ」とファーストネームで呼び合うと申し合わせ、日米首脳で親密な関係を継続すると合意した。

米国に続き同日はオーストラリアのモリソン首相とも電話した。米英豪の安全保障協力の枠組み「AUKUS(オーカス)」の創設を歓迎すると伝えた。6日以降も欧州やアジアの主要国の首脳と電話で話す。

焦点となるのは対中国の姿勢だ。モリソン氏との電話では中国を念頭に東・南シナ海での一方的な現状変更の試みや経済的威圧に反対すると足並みをそろえた。

尖閣周辺への中国の領海侵入の回数は2021年上半期に前年同期比で2倍以上になった。台湾の防空識別圏には4日、中国の戦闘機など56機が侵入した。1日あたりでは過去最多となる。

岸信夫防衛相は「中台の軍事バランスが中国有利に変化し、差は年々拡大している」と危機感を募らす。

茂木敏充外相は台湾情勢に関し「注視するだけでなく、様々な事態を考え、どのような対応がとりえるのか、準備を進めるのか。しっかり検討したい」と語った。

台湾と尖閣は170キロメートルしか離れていない。台湾は尖閣の防衛と密接に関わる。有事を想定した具体的な検討をするなら、現状の防衛力では不十分との指摘がある。防衛費の積み増しなども現実的な課題になる。

首相は就任前の自民党総裁選で中国を念頭にした政策を訴えた。

5年ごとの中期防衛力整備計画(中期防)の改定を前倒しし、尖閣への他国船の侵入への対応を拡充する法整備を検討すると唱えた。攻撃を受ける前に敵のミサイル発射拠点をたたく「敵基地攻撃能力」の保有にも前向きな姿勢をみせた。

ところが就任後の4日の記者会見では対中国の発言は慎重だった。

中国と台湾が加盟を申請した環太平洋経済連携協定(TPP)について「高いレベルを中国がクリアできるかどうか、なかなか不透明ではないか」と述べるにとどめた。中国の加盟を明確に否定せず、台湾の申請に触れなかった。

岸田氏は総裁選前に「中国に甘くなるのではないかというが全く逆だ」と述べたことがある。自民党内には中国への脅威論が根強く、融和的と見られれば批判を受ける。

アジアや欧州の各国は新たに誕生した日本の首相がどのような外交方針をとるのかに関心を寄せる。対中戦略を明示することが今後の外交関係の基盤になる。

首相は4日の記者会見で新型コロナウイルス対応、経済政策を説明した上で「外交安全保障は第3の重点政策だ」と語った。優先度が3番目というわけではない、と分かる積極的な外交戦略が求められる。

4日の記者会見では核廃絶への強い意欲も示した。首相は被爆地である広島の出身だ。

米国はオバマ政権がめざした「核なき世界」の実現をバイデン氏も引き継ぐ。日米で連携しやすいとはいえる。とはいえ安保環境は厳しい。中国や北朝鮮の脅威を考えると、米国の「核の傘」に抑止力を頼らざるを得ない。

日本や米国が参加していない核兵器禁止条約への署名や批准には言及しなかった。長い外相経験もあり、実現の難しさも理解している。

31日に衆院選の投開票日を迎える。30~31日の20カ国・地域(G20)首脳会議はオンラインで参加する。本格的な外交デビューは衆院選後になる。

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