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「経営陣に人権侵害防ぐ責任」 経産省、指針案まとめる

経済産業省は5日、企業がサプライチェーン(供給網)全体で人権侵害を把握し、改善に取り組む「人権デューデリジェンス」の指針案をまとめた。人権侵害のリスクが特定された場合は「経営陣の最終責任」で防止・軽減に取り組む必要があると明記した。取り組みが欧米に遅れる中で企業に対応を促すが、エネルギーなど国策もからむ分野では政府も含めた対応が問われる。

経産省は同日、省庁横断の「ビジネスと人権に関する関係府省庁連絡会議」に指針案を報告した。パブリックコメント(意見公募)にかけた上で今夏にも最終決定する。

経団連の池田三知子SDGs本部長は「政府が人権を重視する考えを国内外に示したことを評価したい。企業がガイドラインを活用することで人権尊重の取り組みが広がり、国際競争力の維持強化につながることを期待したい」と話した。

リコーは「人権問題への対応はビジネス展開上、不可避」として人権デューデリジェンスに着手している。「各社手探りで対応している面もあり、国としての指針が必要になっていた」という。

指針案は企業に4段階の取り組みを求めた。まず人権侵害の特定や深刻度の調査だ。特に人権侵害の懸念が大きい事業を重点的に調べるよう促す。指針案では衣類、鉱物、農業、金融などの業種を例にあげた。

その上で生じている人権侵害の影響などを抑えるようにする。3段階目はその効果の実証や評価で、従業員や取引先への聞き取り調査、工場への訪問などから判断する。こうした取り組みの開示を4段階目で求めた。

人権尊重の取り組みは採用や調達、製造、販売まで全社的な関与が必要として、経営陣の役割を強調したのも特徴だ。「積極的・主体的に継続して取り組むことが極めて重要」と記した。

企業の人権デューデリジェンスの取り組みを支援する経済人コー円卓会議日本委員会の石田寛事務局長は「企業は開示を負担増ではなく、事業の潜在リスクへの会社全体のマネジメント体制を整える好機として捉えるべきだ」と指摘。「開示によりESG(環境・社会・企業統治)投資家などと対話の機会も増え、企業価値向上につながる」と話す。

人権デューデリジェンスは自社内や直接的な取引先だけでなく、供給網全体での対応を求める。米欧では法規制により取り組みが広がっている。世界に調達網を広げる日本企業も対応が急務になっている。化粧品や洗剤に使うパーム油原料の農園を調べてシステム上で管理する花王など、一部の企業は着手している。

指針案では日本特有の問題として技能実習生への人権配慮を例示した。技能実習生のパスポートを保管したり、貯蓄金管理に関する契約を締結したりするケースについて見直しを促した。技能実習生の受け入れ企業には、悪質な仲介業者が介在していないかを監理団体などと連携しながら確認することも求めた。

近年取り沙汰される国際的な人権問題を念頭に、海外取引先などで問題が見つかった場合の対処方法や注意点も示した。すぐに取引を停止するとその企業の経営状況が悪化して雇用が失われ、人権への影響がさらに深刻になる懸念に触れた。取引停止は「最終手段」と位置づけた。

例外もある。中国による新疆ウイグル自治区での人権抑圧といった懸念を念頭に「国家などの統治者の関与」のもとで人権侵害がある場合には、取引停止を選択肢の一つにしてよいと記述した。日本企業が人権侵害の把握や確認のために現地を調査したり、相手国からの協力を得たりするのが難しいことを考慮した。

紛争地帯に進出している日本企業には「責任ある撤退」という考え方も示した。ロシアやミャンマーなどが念頭にある。ウクライナに侵攻したロシアに対しては政府が経済制裁を科す一方、石油・天然ガス開発事業「サハリン2」では政府が日本企業に事業継続を促すなど国策の面も強い。

ESGや社会的責任の観点で撤退・事業縮小が望ましくても、企業にとってどこで線引きすべきかはなお見えづらく、判断は簡単でない。今回の指針や今後つくる実務担当者向けの手引書とともに、適切な判断をしやすい環境を整えていくことも重要になる。

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