首相「資本主義バージョンアップ」 日本の成長持続訴え
英シティーで講演、金融所得課税触れず
【ロンドン=秋山裕之】岸田文雄首相は5日、英国の金融街シティーでの講演で自らの経済政策「新しい資本主義」を巡り「一言で言えば資本主義のバージョンアップだ」と訴えた。2021年の政権発足時からある市場や成長を重んじないとの印象の払拭につなげる。
首相は講演の冒頭、ロシアのウクライナ侵攻について経済制裁や人道支援を続けるなどと主張した。その後、時間を割いたのは新しい資本主義を巡る投資家らへの説明だった。
「日本経済はこれからも力強く成長を続ける。安心して日本に投資してほしい」と呼びかけた。「日本市場、日本企業・製品・サービスは買いだ」と力説した。
1980年代に旧日本長期信用銀行(現新生銀行)で勤務した経験に触れ「戦後の首相で金融業界出身は私が最初だ」と紹介した。融資などを担い「民間のアニマルスピリッツに支えられた強い経済こそ最も重要だと強く確信した」と説いた。

資本主義の歴史に関し「レッセフェール(自由放任主義)から福祉国家、福祉国家から新自由主義」という「大きな転換を経験した」と指摘した。2回の転換期に「市場か国家か、官か民か、振り子のように大きく揺れてきた」と振り返った。
新しい資本主義は「市場も国家も、官も民も」だと発言した。「官民連携で新たな資本主義をつくっていく」と提唱した。英国で1990年代にブレア政権が掲げた「第3の道」に近い考え方を披露した。
市場が警戒した金融所得課税の引き上げや自社株買いのガイドライン策定には触れなかった。上場企業の四半期開示の廃止も言及しなかった。
安倍晋三元首相は13年に米国のウォール街で「バイ・マイ・アベノミクス」(アベノミクスは買いだ)と演説した。13、14両年に英シティーでも投資家らを前に講演した。
首相は今回、この経緯も意識した。「引き続き大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略を一体的に進める」と唱えた。アベノミクスの骨格を引用し、同様の政策を継続する考えを示した。
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