金融所得課税見直し「選択肢の一つ」 首相が検討明言
「新しい資本主義実現会議」を設置

岸田文雄首相は4日の記者会見で、金融所得課税の見直しを検討する意向を示した。「選択肢の一つとして(自民党総裁選で)挙げさせてもらった」と述べた。一律20%の税率を引き上げて税収を増やし、中間層や低所得者に配分することなどを検討する。「新しい資本主義実現会議」を新設し、議論を進める考えを示した。
首相は「『成長と分配』の好循環を実現する。分配を具体的にする際には様々な政策が求められる」と強調。「その一つとして『1億円の壁』を念頭に金融所得課税についても考えていく必要があるのではないか」と言及した。
「1億円の壁」はおおむね所得1億円を境に、所得税の負担率が低くなる現状を指す。株式譲渡益や配当金など金融所得への課税は一律で20%(所得税15%、住民税5%)だ。
一方で給与所得などの場合、所得が多いほど税率が上がる累進制だ。課税所得4000万円以上なら住民税も含めて税率は最高の55%となる。所得に占める金融所得の割合が相対的に高い富裕層ほど税率が低くなる傾向があるとの問題意識がある。

具体的な方向性は衆院選後に本格化する2022年度税制改正などで議論する見通しだ。鈴木俊一財務相は4日の就任に先立ち、国会内で記者団に「年末の税制改正に向け、(与党の)税制調査会の議論を注意深く見守っていきたい」と語った。富裕層ほど所得税の負担率が低くなる現状については「問題点は承知している」と話した。
市場には投資意欲を冷やしかねないとの警戒感がある。政府が推進してきた「貯蓄から投資へ」との方針に逆行するとの指摘もある。12年の第2次安倍晋三政権以降、金融所得課税を巡ってはたびたび増税論が浮上してきた。安倍元首相、菅義偉前首相は株高の維持を優先して慎重な姿勢を示してきたとされ、具体化しなかった。
岸田首相は分配戦略として①企業で働く人や下請け企業に成長の果実が分配されるような環境整備②中間層の拡大、少子化政策③医師、看護師、介護士、保育士らの給与に関わる公的な価格のあり方の抜本的な見直し④科学技術や重要インフラ整備などの財政の単年度主義の弊害是正――を挙げた。
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