「物価上昇カバーする賃上げを」首相、来春労使交渉巡り

政府は4日、「新しい資本主義実現会議」(議長・岸田文雄首相)を開き、10月末にまとめる総合経済対策にむけた重点施策を取りまとめた。人への投資を重視し、リスキリング(学び直し)や労働移動を円滑にする支援策を並べた。来春の賃金交渉にむけて首相は「物価上昇をカバーする賃上げを目標にし、個々の企業の実情に応じ労使で議論いただきたい」と求めた。
総合経済対策をめぐり首相は「新しい資本主義」の実現が柱になるとの意向を表明していた。

賃上げが着実に広がるよう中小企業に価格転嫁も促した。コスト上昇分の取引価格への上乗せを求めたのにかかわらず、大手など発注元が説明もなく、取引価格を繰り返し据え置いたりしたケースでは、発注元の企業名を公表する。内閣官房はこうした企業数が「2桁にのぼるのではないか」との認識を示す。
首相も同日の会議で「転嫁拒否の悪質事例は公表し、改善を強く促すなど、踏み込んだ対応をお願いする」と述べた。
「資産所得倍増プラン」を巡っては少額投資非課税制度(NISA)や個人型確定拠出年金(iDeCo、イデコ)の改革にも触れた。ともに年末に結論を得るとし、今後は与党との調整を加速する。
NISAは抜本的拡充と恒久化を掲げた。年間投資額の上限の引き上げに関し、内閣官房幹部は「2倍から3倍にしていくことも考えなければいけない」と指摘する。
イデコは加入対象年齢を現状の65歳未満から引き上げることを含めて検討する。2021年度から70歳までの就業機会確保が企業の努力義務となったのにあわせる。柔軟な資産形成を後押しする狙いだ。
成長分野への労働移動をめぐっては23年6月までに具体策をまとめた指針をつくる。一般の転職希望者に対し、民間の専門家が転職実現まで丁寧に支援する仕組みの整備や、年功序列的な賃金体系からジョブ型の職務給への移行促進を盛り込む。