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「コロナ後」再生へ私的整理素早く 債権者の多数決で

政府は4日、迅速な企業再生に向けた法整備を進める方針を正式に公表した。金融機関との協議で債務を軽減する私的整理を債権者の多数決で進められるようにする。従来は全員の同意が必要で、調整に時間をかける間に倒産する事例もあった。新型コロナウイルス危機で債務が急増する中、再成長の見込みがある企業が再生に取り組みやすいよう支援する。

2023年の通常国会に「私的整理円滑化法案」の提出をめざす。制度の詳細は今後詰める。私的整理の要件緩和は、経営効率の悪い企業の延命につながりかねないとの懸念もある。債務整理に反対する債権者にも配慮した公平な仕組みづくりが課題になる。

コロナ禍で企業が抱える債務は膨らんだ。日銀の資金循環統計によると、金融機関を除く企業の債務総額は22年6月時点で643兆円と19年12月に比べ13%増加。企業を対象にした民間調査では債務が事業再構築の足かせになっているとの回答が3割を超えた。

最近の事例では、経営再建を目指すマレリホールディングス(旧カルソニックカンセイ)が私的整理の一つである事業再生ADR(裁判以外の紛争解決)を申請したが、一部の金融機関から再建計画への同意を得られず法的整理に移行した。主力行とマレリが当初描いていた想定より約2カ月遅れた。

全債権者の同意が不要な企業再生制度は欧州や韓国ですでに普及している。こうした状況を踏まえ、政府はコロナ危機からの脱却を促す手段として、新たな私的整理の枠組みを整える必要があると判断した。

現状の事業再生は裁判所が関与する会社更生法などによる法的整理と、金融機関などの当事者などが話し合う私的整理に分けられる。私的整理は手続きが原則非公開で、企業イメージの毀損などで信用力が落ちる可能性が相対的に低い。

一方、対象の債権カットの割合や再建計画は債権者全員の同意を得る必要がある。内閣官房幹部は「メインバンクが計画を認めても少数の反対により進まないケースがある」と指摘する。

新制度では、経営が破綻状態になる前に企業が再建計画を実行に移し、スピード感を持って事業転換できるよう後押しする。対象としては、団体客に依存していた宿泊施設が個人客シフトのため施設改修に踏み切ったり、飲食店がデリバリー投資を拡大したりする事例を念頭に置く。

課題は多い。海外では不利益を被りかねない少数の債権者向けに異議申立制度などを整備しており、日本でも「当然検討する」(内閣官房幹部)。再生の見込めないゾンビ企業の延命につながらないようチェック機能をどう確保するかも重要になる。

金融業界からは比較的前向きな声が上がる。大手銀行幹部は「多数決で合理的に進められる」と話す。大手行が再建案を多数決で押し切ることに不安を覚える地銀関係者は「少数債権者保護の制度設計を見守りたい」という。

内閣官房によると、企業債務の対国内総生産(GDP)比は21年9月末で116%と20年末から同程度で高止まりする。一方、欧州は95%、米国は81%でともに4ポイントずつ減った。国際比較でも日本企業の債務は経済再生の重荷になっている。

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