東電・北海道電は燃料費6%減 値上げ申請7社が新試算

春以降の家庭向け電気料金の値上げを目指す大手電力7社は3日、直近の化石燃料の価格動向や円相場などを反映した燃料コストの新たな試算を提示した。2022年11月〜23年1月のデータを用いた。東京電力ホールディングスや北海道電力は液化天然ガス(LNG)価格の下落を受け、燃料費が当初の試算より6%程度減る。
経済産業省の電力・ガス取引監視等委員会の専門会合で示した。東北電力、北陸電力、中国電力、四国電力、沖縄電力の5社は4月からの値上げを申請している。これまでは申請前の22年7〜9月の価格を使って算定していた。6月からの値上げを申請した北海道電は22年9〜11月、東電は同8〜10月の価格を用いていた。
新たな試算を示したのは岸田文雄首相が2月24日に「日程ありきではなく、厳格かつ丁寧な査定による審査をしてもらいたい」と関係閣僚らに指示したことが背景にある。石炭やLNGの国際価格は足元では下落傾向で、一時の円安も一服している。新たな数字を使えば、燃料費には圧縮の余地があるとの見方があった。

河野太郎消費者相は3日の閣議後の記者会見で「経産省は最大限(電力会社が)努力した結果(の値上げ)なのか検証してほしい」と述べ、燃料価格が下落傾向にあることを踏まえて判断すべきだとの認識を示した。値上げの認可は経産相と消費者相の協議も必要になる。
新たな試算では北陸電を除く6社は申請時より原価が減少するとはじいた。中国電は0.5%、東北電と四国電は1%程度、沖縄電は2.8%減った。東電、北海道電は6%台のマイナスだった。北陸電は石炭の輸入価格が上がった影響で0.3%増えた。監視委は次回会合で、新たなデータをもとに審査をするかを判断する構えだ。
今回値上げの議論をしているのは国の認可が必要な規制料金だ。燃料費の原価の部分が圧縮できれば各社が申請している値上げ幅は全体として一定程度抑えられる可能性はある。
ただ料金の中には燃料費調整制度(燃調)という燃料コストを自動で料金に反映できる仕組みもある。燃調は3〜5カ月前のLNGや石炭の輸入価格を自動的に反映している。コストを再計算して値上げ幅を圧縮できても、各家庭が支払う電気料金は引き続きLNGなどの価格動向によって変動する。
燃調は消費者保護の観点から上限が設定されており、現状は転嫁しきれない部分を電力会社が負担し経営を圧迫している。今回の値上げ申請はこうした状況を改善する狙いがある。岸田首相が厳格な査定を求めたことで、5社の4月時点の値上げは難しくなっている。

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